国際協力ニュース

第81号 平成19年5月1日発行

聖マリア病院グループとタムリン病院グループ相互の交流の可能性の検討

聖マリア学院大学 井手 信

タムリン病院の外観

看護学生たち

タムリン病院の名前は2006年5月のインドネシア・ジャワ島地震に対する聖マリア病院の医療支援活動の拠点となったことで皆様すでにご存知のことと思う。昨年11月、タムリングループ総長Radjak 氏の聖マリアグループの訪問(この時に相互交流の申し出あり)を受けた形で、相互の交流の可能性の検討を目的に今回のミッション派遣となった。メンバーは聖マリア病院から浦部国際協力部長(医師)、高岡国際協力部看護人材育成課長(助産師)、井福管理事務長(臨床工学士)と聖マリア学院大学より井手(医系教員)の4名。派遣期間は2007年3月9日から23日。

タムリン病院の名前は2006年5月のインドネシア・ジャワ島地震に対する聖マリア病院の医療支援活動の拠点となったことで皆様すでにご存知のことと思う。昨年11月、タムリングループ総長Radjak 氏の聖マリアグループの訪問(この時に相互交流の申し出あり)を受けた形で、相互の交流の可能性の検討を目的に今回のミッション派遣となった。メンバーは聖マリア病院から浦部国際協力部長(医師)、高岡国際協力部看護人材育成課長(助産師)、井福管理事務長(臨床工学士)と聖マリア学院大学より井手(医系教員)の4名。派遣期間は2007年3月9日から23日。

M.H.ThamrinHealthCare Groupはジャカルタに11ヶ所の医療施設と9学科を持つ教育機関を運営する機関である。タムリングループの基幹病院であるM.H.Thamrin International Hospital Saremba,Jakartaは病床数181床を有する私的病院で、ジャカルタの裕福層を対象とし、屋上には救急用のヘリポートも有する。各種医療機器も整備され先進国に近い医療レベルを有していると思われた。看護部門についても看護過程(POS)に沿ってケアが展開され、一定の看護技術が保持されていた。患者への配慮等ケア/ケアリングも徹底されており、職員の笑顔とほこりひとつない隅々まで掃除の行き届いた清潔な環境が印象に残る。

タムリン病院から車で40分程のところにM.H.Thamrin EducationIinstitutionがある。Pharmacy, HealthLaboratoryTechnics,Nutrition,Hospital Admnistration,Management ITはDiploma Program で、Economic Science,ICT,Community Health はGraduate degreeで教育課程が展開されている。キャンパスはインドネシアの経済的な事情等によりハード面では質、量ともに十分ではないが、若手教員の教育の質向上の意欲は高く、今後の交流が期待された。

開発途上国に対する国際協力はややもすると自分の専門技術をもって行う一方的な援助と捉えられがちであるが、一定の医療水準を持つタムリン病院との交流は、そのような誤った考えに気づき、お互いに対等な立場での真の国際協力を学ぶ良い機会となると思える。聖マリアグループの若い職員・研修生・学生にそのような教育の機会が与えられる様に教育プログラムの開発が急がれる。


M.H. Thamrin Health Care Group(インドネシア ジャカルタ市)調査報告について

臨床工学室 井福武志

医事管理室を見学

今回、インドネシア、ジャカルタにあるM.H. Thamrin Health Care Group(以下、Thamrin Groupと表記)との協力関係樹立の可能性を検討するために、聖マリアグループから井手信聖マリア学院大学学長、浦部大策国際協力部長、高岡宣子国際協力部課長と私の4名が2007年3月19日~23日の期間でThamrin Groupに派遣されましたので、概要を報告いたします。

派遣に至った経緯については、2006年5月末にインドネシア・ジャワ島中部で発生した地震において、聖マリア病院はHuMA(Humanitarian Medical Assistance:災害人道医療支援会)と合同チームを形成し、医療支援目的で職員を派遣しました。その際、インドネシア側で協力先となったのがジャカルタ市にある私立病院M.H.Thamrin Hospital(以下、タムリン病院)であった事。そのThamrin Groupの病院長、総長でもあるRadjak氏は、病院を開く以前はインドネシア政府で災害医療を担当しており、ストモ病院プロジェクトでも、JICAとの事前協議では彼が主な取りまとめを実施されていたとの事。また、自組織に抱える医療職員(学生も含む)の海外派遣、交換プログラムにも興味を持っておられ、Thamrin Groupとアメリカ合衆国やマレーシアの英国系看護学校との交流プログラムも既に実施されている事。これらの背景を下に、日本の医療組織との交流拠点として、既に海外支援活動の実績を持っている聖マリア病院との交流に非常に興味を示され、国際協力部長の浦部医師との打ち合わせの下、今回の派遣が実行される事となった訳です。

目的としては、本邦においてもEPA (Economic Partnership Agreement経済連携協定)の批准によるフィリピン人医療職者を受け入れる動きが国レベルで推進されている中、当院の職員の教育活動の一環として、海外交流による職員研修は有意義かの検討。同時に実施されるに際し、現地の治安や宿泊所、生活事情などといった点を明確にしておく必要性。それらを踏まえ、タムリン病院とThamrin Groupに属する看護学校を対象に法人間における交流そのものの意義、メリットを含め、交流可能な職種領域、交流方法を検討する事としました。

ゲストハウスの部屋

病院内のME機器

タムリン病院は個人病院であり、焦点を富裕層に当てた最先端医療を展開しており、一般的な途上国の病院のイメージである貧弱な機材、たくさんのゴミ、汚れた床や壁等の、医療機関とはかけ離れた先進国に近い医療環境を確立しています。とは言え、当院と比較すればまだ差異も多々あると感じました。

医療機器に関しては、タムリン病院の機材所有状況からも運営はうまくいっている様で、院内のIT関連や高額医療機器に力が注がれていました。しかし、多くの高額機器は、アメリカ製の中古機器の購入であると言われています。医療機器のメンテナンスにおいては、技術者が3名従事しており、彼らは医療における国家ライセンスではないが大学を出て工学系のライセンスを取得し、医療機関における機器のメンテナンスを業務としていました。医療経済を踏まえた戦略の展開という意味において、機材の購入計画や医療機器メーカーとの契約方法等の視点でのアドバイスも含め交流によるメリットはあるのではないかと感じます。

医事会計部門に関しては、院内SE(System Engineer)が作成した医事請求データベースプログラムにて2台のコンピュータが設置され稼働していました。実に良く纏まったシステムであり、病床数や患者数を考慮すれば充分なシステムとも思われます。

最終討議会の模様

今後、この派遣が意義あるものとするためには、交流プログラムの構築を充分検討すべきであると思います。そうすることで、当院職員にとっても貴重で多角的な経験が積めるであろうし、相互に益のある交流プログラムになるのではないかと考えました。


私が感じた日本と人

忠南大学病院小児科 元 俊康

(※国際協力部注)以下は本年4月2日より2週間、新生児センターでの研修のため韓国忠南大学より来院されていたDr.Joon-won Kang(元俊康)より、帰国前に提出された研修の感想文です。翻訳は国際協力部の高和珍さんに協力していただきました。

NICUで研修中のDr.Kang

日本という国は韓国からとても近い国です。インチョン空港からは1時間少々で着くし、釜山からは1時間もかかりません。しかし、とても遠い国でもあります。歴史のことで対立したこともあるし、良くない感情があった時期もありました。

私にとって日本という国はそういう国でした。教科書で歴史を習い、新聞やニュースなどで日本の話を聞いていましたが、私には関係ないことだと思っていました。この2週間という時間は私に具体的な日本のことを教えてくれた時間でした。

経済大国、民族主義...こういう大きな言葉を使わずに私なりの日本を定義してみたいと思います。人...人です。私が感じた日本は人でした。上辺だけだという人もいるだろうし、ただの習慣だという人もいるかもしれませんが、私は日本人が人を気遣うのを感じました。道や駅、商店、食堂などでも、私を気遣ってくれたたくさんの方がいらっしゃいました。言葉が通じない外国人だから気を使ってくれたのかもしれませんが、とてもありがたいことでした。

この事を一番よく感じられた所は新生児の病棟でした。赤ちゃんが産まれ、NICUに移された後、インキュベーターに入って検査を施行し様々な処置をするたびに赤ちゃんを細かく気遣うのを感じられました。私が韓国の病院で赤ちゃんを診療するとき、もちろん最善をつくしますが、日本の細かいところは見習わないといけないと思いました。

使われている機械やマンパワーなどに若干違いはありますが、物理的なものを超えた態度がみられました。状態が良くない赤ちゃんを見ている両親と主治医の顔からは、心配や放棄よりも粘り強さと希望が読みとれました。私が患者さんに対し「たいへんそうだ」と思ったことはなかったかと振り返ってみました。

この2週間、学問的な面では大きな進歩はなかったかもしれませんが、これから赤ちゃんを治療していくなかで持たないといけない心構えを新たにできる大切な時間でした。貴重な機会を与えていただいた久留米聖マリア病院と細かく面倒をみて下さった矢山さんをはじめ国際協力部の職員の方々、池田さんや森田さんに感謝し、言葉も通じない私にとても親切にして下さった橋本先生をはじめNICUの皆様に心から感謝の言葉を申しあげます。聖マリア病院で治療を受けている患者皆様が健やかになるように祈ります。これが遠い国でもあり近い国でもある日本での2週間の感想でした。


今月の動き

研修関係

5月7日(月)~5月19日(土)
韓国忠南大学校病院医師が新生児センターで研修

派遣関係

5月13日(日)~6月26日(火)
杉本孝生:スリランカ国開発調査に係る派遣

その他

  • 宮城裕人(平成19年3月1日より4ヶ月) WHO/WPROでのボランティア勤務