診療部長 神宮 賢一
心疾患や脳血管障害による死亡率は、予防や治療法の発達により年々減少していますが、「がん」による死亡率は、予防や早期発見の努力とはうらはらに、高齢化に伴い近年、増加傾向にあります。その「がん」に対する治療法として大きく分けると手術、化学療法、放射線治療の3つがあります。それらの治療法は、単独で行うこともありますし、2つ又は3つを併用して行うこともあります。ここでは、「がん」治療の3本柱のひとつである放射線治療を紹介していきます。
放射線治療の目的は、
などで、放射線治療専門の認定された医師が最適な方法を選択し治療します。
放射線治療は体の外から放射線を患部に照射する「外照射」と、放射線を出している物質(放射性同位元素)を体の中に挿入または刺入、あるいは注入して治療を行う「内照射」があります。
主にエックス線、電子線が使用されますが、大規模な施設によっては、粒子線(陽子、重粒子など)を使用することもあります。
放射性同位元素をステンレスなどのカプセルに密封して子宮や食道などの「腔」に挿入して治療を行う腔内照射、直接腫瘍に針状のカプセルに入れて刺入する組織内照射、放射性同位元素を密封せずに内服したり注射をして治療を行う非密封小線源治療があります。
それぞれの装置をどう使用するかは、疾患の部位、大きさ、進行度、治療の方針、方法などによって選択されます。
当院では現在、外照射の装置としてリニアック(直線加速装置"Clinac21-EX")と、密封小線源を用いた内照射用装置のRALS(リモート・アフター・ローディング・システム“マルチソース”)が設置されています。
主治医が放射線治療を治療方法の一つとして選択した場合、聖マリア病院内では、主治医がその旨を説明し、院内紹介によって放射線治療へと案内されます。
院外からは、直接かかりつけの先生からご連絡を頂き、紹介状等の資料を持って当院の放射線治療科へ来ていたただく場合と、一度当院の外来(外科や泌尿器科など)にかかりつけの先生からご紹介いたただき、受診された科の主治医が放射線治療を選択した場合、院内紹介と同じように放射線治療科に案内されます。
放射線治療科では、担当の放射線治療専門認定医が資料を基に放射線治療が適切かどうかを判断します。放射線で治療を行うことが適切であると判断されたら、まず治療の説明があります。治療の方法、回数、治療に伴う副作用等が説明され、患者さん本人があるいはご家族の方が納得し、同意が得られれば治療計画を行います。
治療計画にはCT、X線シミュレーターを使い、得られた画像データを治療計画用コンピュータに送り、放射線線の種類、量、方向、回数などを入力し、最適な治療方法を計算します。その際、部位によっては固定具(シェル)等を作成したり、マウスピースなどの補助具を作成します。
治療計画が完了したら実際の治療に移ります。最初は、治療計画通りに照射されているかの検証を行いますので、通常の治療よりも長くかかります。通常1回の治療時間は5分から10分程度(特殊な治療法の場合は除く)で終わります。治療の期間は、通常の治療の場合、おおむね20回から30回で、4週間から6週間ぐらいです。
治療装置の特徴として、リニアックでは、照射野絞り60対(5ミリ40対、10ミリ20対)のマルチリーフを用いた原体照射、スカルペルシステムを組み合わせての脳定位照射が行えます。
脳定位照射は、脳内の小さな(3センチ未満)病巣に対して放射線を集中して照射し、1回または数回の照射で治療するものです。これまでは照射位置を決定するために頭蓋骨に達するピンで脳定位照射用のリングを装着していましたが、現在本院に導入されているスカルペルシステムは、マウスピースに体動監視用の素子を付け、それを赤外線カメラにて追跡するという方式を採用しています。素子の位置で照射中心座標を決定し、頭部が動いていないときに照射を行うシステムであるため、ピンを打たない、痛くない固定法です。
RALSでは、線源やアプリケーターが細く小さいので、子宮頸部、食道、胆道(胆嚢チューブを利用して)等の治療や、舌癌の治療(組織内照射として)にも使用できます。また、ご質問などありましたら、放射線治療科へご遠慮なくお尋ねください。
私たち放射線治療科のスタッフ一同は、患者様が安心して放射線治療を受けていただくために努力をしております。わかりにくい事や疑問に思う事などがありましたら、ご遠慮なくお尋ねください。また、放射線治療科に対するご意見やご要望がありましたら、気兼ねなく申し出てください。今後の治療部に反映させたいと思います
尚、放射線治療を受けられる方々が、正確な治療を受けられるために、医療安全推進の観点より、医療事故(過剰照射、過少照射)防止を目的とした、三者機関(財団法人 医用原子力技術研究振興財団)によるリニアックの出力測定を行っております。
更新:2009年10月