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クオリティインディケーター

 医療の質を改善する為の一つのツールとして、クオリティインディケーター(Quality Indicator)という指標が有ります。私たちの聖マリア病院も、2011年度から本格的に取り組み、診療各科の色々な領域に項目を設け、表示できるまでに至りました。基本的には、病院背景の違う他施設との比較を行うものでは無く、自施設の経時あるいは経年比較を行う事により、自分たちの医療の質を確認し、改善を加えることにより、医療の質を担保するシステムです。
 今後は、必要な項目を増やしつつ、常に改善を図って診療の質を高めていきたいと考えています。

聖マリア病院 QI

◆診療指標(クオリティインディケーター:QI)分類

Ⅰ-1:患者満足度(外来患者・入院患者)

指標意義
当院が提供する医療サービスに対して、患者さんがどのように感じているかを把握し、その結果を反映していくことで、医療サービスの一層の充実を図るために実施しています。


  • 分母:アンケートに回答した外来患者数
  • 分子:回答した患者数

▽外来患者

患者満足度(外来患者)

▽入院患者

患者満足度(入院患者)

コメント
患者さんへ良質で安全な医療を提供すると共に、患者さんの心情を十分汲み取ったサービスの提供を継続的に実施することを目的として取り組んでいます。今後も更なる改善で患者さんの満足度が上がるよう努力してまいります。


2019年度改善事例
・外来待合室の椅子増設、レイアウト変更
・外来エスカレーター吹き抜け部分からの落下防止策としてアクリルパネル設置
・施設内放置自転車撤去
・外来診察室の分かりにくい表示を変更
・小児プレイルームへの時計設置
・各病棟洗面台の静穏化修繕
・患者図書室への返却ボックス設置
・救急外来受診後の会計待ち時間に対する案内をトリアージ用紙への追加標記

Ⅰ-2:入院患者の転倒・転落率(発生率・損傷率(レベル2以上・レベル4以上))

指標意義
入院中の患者の転倒やベッドからの転落は少なくありません。原因としては、入院という環境の変化によるものや疾患そのもの、治療・手術などによる身体的なものなどさまざまなものがあります。転倒・転落による傷害発生事例の件数は少なくても、それより多く発生している傷害に至らなかった事例もあわせて報告して発生件数を追跡するとともに、それらの事例を分析することで、より転倒・転落発生要因を特定しやすくなります。こうした事例分析から導かれた予防策を実施して転倒・転落発生リスクを低減していく取り組みが、転倒による傷害予防につながります。


  • 分母:入院患者の延べ人数
  • 分子:入院患者の転倒・転落発生件数

▽発生率

入院患者の転倒・転落率(発生率)

入院患者の転倒・転落率(損傷率レベル2以上)

入院患者の転倒・転落率(損傷率レベル4以上)

コメント
転倒・転落は、日常の生活場面で、どの患者さんにも起こり得ます。そのため、職員は院内の環境整備、入院時及び定期的に患者さんの転倒・転落発生要因アセスメント等を行っています。 また、2015年度からは、未然防止を目的に熱赤外線離床センサーを3病棟に導入し、発生率の減少傾向がみられました。2020年度も、さらに1病棟に導入しています。転倒・転落は、患者さん側の発生要因も大きいため、ゼロにすることは困難ですが、患者さんに及ぶ障害を最小限に抑えられるよう、今後も取り組みを継続していきます。

Ⅰ-3:褥瘡発生率

指標意義
褥瘡は、看護ケアの質評価の重要な指標の1つとなっています。褥瘡は患者の生活の質(QOL)の低下をきたすとともに、感染を引き起こすなど治癒が長期に及ぶことによって、結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります。そのため、褥瘡予防対策は、提供する医療の重要な項目の 1 つとして捉えられています。


  • 分母:入院患者の在院延べ日数
  • 分子:真皮(d2)以上の新規褥瘡発生患者数

褥瘡発生率

コメント
当院の褥瘡対策チームは、形成外科医・皮膚科医をはじめ、薬剤師・皮膚排泄ケア認定看護師(褥瘡専従看護師)・看護師・管理栄養士・理学療法士・資材管理部事務員から構成され、各病棟の病棟褥瘡専任看護師と連携し活動しています。昨年度の真皮(d2)以上の褥瘡発生は116件(総新規発生患者数)と前年度の151件より35件の減少を示しました。この背景には、①体圧分散マットレスの運用の見直し②入院時からの積極的な予防的スキンケア開始③オムツ採用や使用方法の見直し④栄養サポートチーム(NST)との連携強化を図ったことが、改善につながっていると考えます。
今後も、患者を取り巻く多職種との連携を図り、褥瘡対策研修会での教育や日々のベッドサイドでの実践指導を通して、褥瘡予防対策の強化・褥瘡発生後ケアの質の向上に努めていきます。

Ⅰ-4:解剖率

指標意義
病理解剖の主な目的は、死因や病気の成り立ち、病態を解明することにあり、解剖結果はその後の診療に役立つため、医療の質を反映しているといえます。


  • 分母:死亡退院患者数
  • 分子:病理解剖数
  • 除外:緩和ケアおよび救急患者として受け入れた患者が、処置室、手術室等において死亡した場合は除く

解剖率

コメント
院内で死亡された患者のうち、病理解剖を施行させていただいた割合(括弧内は病理解剖症例数/死亡退院患者数)です。従来、病理解剖は「病院の質・医療の質」の指標として重視されてきましたが、近年の画像診断ほか各種検査の進歩による生前診断の精度向上によって、全国的に病理解剖は激減しています。当院でも解剖数(率)は年々減少しておりましたが、2019年度は若干上昇しました。出来れば、もう少し数(率)の増加(30体以上ないし8%以上)を期待したいところです。 病理解剖により、生前の臨床診断や治療の妥当性を評価することが可能です。また、生前に捉えられていなかった未知の所見が得られることも少なくありません。病理解剖の意義は非常に高いものです。
なお、当院は、臨床研修指定病院,日本内科学会認定教育施設,病理学会研修認定施設に指定・認定されています。認定施設の維持や内科認定医や病理専門医の育成にとっては、病理解剖で得られる知見や考察は重要です。

Ⅰ-5:紹介率・逆紹介率

指標意義
現在の医療システムでは、個別の病院で医療を完結することは不可能な時代となりました。そこで、地域内で完結した医療を提供する必要があり、それぞれの医療機関が適切な役割分担と連携を図っていくことが大切です。地域医療支援病院とは、かかりつけ医を支援し、専門外来や入院、救急医療など地域医療の中核を担う体制を整えた病院のことをいいます。


  • 分母:初診患者数-(休日・夜間の初診救急患者数-休日・夜間の初診救急入院患者数)
  • 分子:紹介初診患者数+(初診緊急入院患者数-初診緊急入院患者のうち紹介患者数)
  • 分子:逆紹介患者数

▽紹介率

紹介率

▽逆紹介率

逆紹介率

コメント
現在、当院は地域医療支援病院として、患者さんの身近にある地域の「かかりつけ医」(医院・診療所等)との役割分担に取り組んでいます。症状が軽い場合は、まず「かかりつけ医」を受診し、専門的な治療や検査が必要と判断された場合に大学病院や当院のような地域医療支援病院で受診して頂くことにより、お互いの長所を活かして連携しながら、患者さんの症状に応じた適切な医療を提供し、病気の治療や早期発見に努めています。100%を超えている理由は、分母は平日日勤の初診のみですが、分子は夜間・休日の紹介・逆紹介が含まれるためです。

Ⅰ-6:職員におけるインフルエンザワクチン予防接種率

指標意義
医療機関を受診する患者は、免疫力が低下していることが多く、病院職員からの感染を防止する必要があります。接種率が高い場合には、院内感染防止対策に積極的に取り組んでいると評価できます。


  • 分母:職員数
  • 分子:インフルエンザワクチンを予防接種した職員数

職員におけるインフルエンザワクチン予防接種率

コメント
インフルエンザワクチン費用については、健康保険組合からの補助があり、自己負担が無い事、非常勤職員においては、自己負担が少ない金額でワクチンを接種できるように配慮している事も接種率が高い理由と考えます。また、全ての職員において、ワクチン接種を1つの会場に集まり時間を決めての集団接種するのではなく、各部署に必要数ワクチンを配布し、看護管理者が管理し、期間内に所属医師から接種してもらう様に配慮している点も接種率が高い要因と考えます。

Ⅰ-7a:100床当たりのインシデント・アクシデント発生件数

指標意義
身体への侵襲を伴う医療行為は常にインシデント・アクシデントが発生する危険があります。その発生をできる限り防ぐことは医療安全の基本です。仮にインシデント・アクシデントが生じてしまった場合、原因を調査し、防止策をとることが求められます。そのためにはインシデント・アクシデントをきちんと報告することが必要です。


  • 分母:許可病床数
  • 分子:インシデント・アクシデント発生件数×100

100床当たりのインシデント・アクシデント発生件数

コメント
近年の医療安全に対する考えは、「医療事故はあってはならないこと」から「医療事故は起こりうること」という認識に変化しています。当院においても、発生したインシデント・アクシデントを貴重な情報として要因分析し、再発防止に向けた改善策立案を行い、院内全体に警鐘する仕組みがあります。患者さんやご家族が、医療に期待する「安全」「安心」「納得」という基本ニーズに応えられるよう、職員へインシデント・アクシデントが発生した場合の報告を促し、その内容を丁寧に吟味することを継続していきます。

Ⅰ-7b:全報告中医師による報告の占める割合

指標意義
インシデント・アクシデントの報告は、一般に医師からは少ないことが知られており、この値が高いことは医師の医療安全意識が高い組織の可能性があります。


  • 分母:インシデント・アクシデント報告総件数
  • 分子:医師が提出したインシデント・アクシデント報告総件数

全報告中医師による報告の占める割合

コメント
各診療科で医師のローテーションが多く、当院のインシデント・アクシデント報告システムに不慣れなことも、報告数に影響すると考えます。チーム医療の推進により、発生したインシデント・アクシデントは医師以外の職種からの報告で把握することは可能です。しかし、診断・治療の技術は極めて急速に進歩しています。それらに対応して、迅速に知識・技術、組織体制の再構築も考慮する必要があり、発生した事象の要因分析に医師の視点は欠かせません。今後も医師に向けて、インシデント・アクシデント報告に対する意識付けを促していきます。

Ⅱ-1:救急外来受診から入院まで4時間以内の割合

指標意義
救急外来受診後、入院までに要した時間には、診察までの待ち時間に加え、ある程度の診断がついて診療方針が決定されるまでの時間であり、各部門の連携の緊密さ・迅速性を表しています。


  • 分母:救急外来を受診して入院となった患者数
  • 分子:救急外来受診受付から入院までの所要時間が4時間以内の患者数

救急外来受診から入院まで4時間以内の割合

コメント
目標としては4時間以内に100%入院にもっていきたいと考えています。担当医の迅速な診察、入院指示出しを行い、各科・各病棟との連携を図り、適切な時間に適切な場所で対応できるような環境を構築していきたい。

Ⅱ-2:入院患者におけるER滞在時間

指標意義
救急外来受診後、入院までに要した時間には、診察までの待ち時間に加え、ある程度の診断がついて診療方針が決定されるまでの時間であり、各部門の連携の緊密さ・迅速性を表しています。


  • 分母:救急外来を受診して直接入院となった患者数
  • 分子:救急外来受診受付から入院までの所要時間

入院患者におけるER滞在時間

コメント
200分の壁が厚いようですが、目標としては200分以内に100%入院にもっていきたいと考えています。担当医の迅速な診察、入院指示出しを行い、各科・各病棟との連携を図り、適切な時間に適切な場所で対応できるような環境を構築していきたい。

Ⅱ-3:救急外来から直接緊急手術になった患者の救急外来受診から手術室搬入までの時間

指標意義
緊急手術までに要する時間は、来院・受付・診察・インフォームドコンセント・手術室準備・手術室搬入・執刀までの時間です。これらにかかる時間によって病院の救急医療にかかる迅速性を測ることができます。


  • 分母:救急外来受診にて手術になった患者数
  • 分子:来院受付時間から手術室搬入までの延べ時間

救急外来から直接緊急手術になった患者の救急外来受診から手術室搬入までの時間

コメント
緊急手術までの所要時間は、来院・受付・診察・検査・診断・インフォームドコンセント取得・手術室準備・手術室搬入までの時間で決定されます。
これを左右する因子として、担当科の繁忙状態、手術室の混雑状況、麻酔科の問題、検査の混雑の状態、家族の来院までの時間など予測不能な因子も多々あるため、当科だけでなく病院全体の課題として検討していかねばなりません。

Ⅱ-4:Door to balloon時間(来院からバルーン拡張までの平均時間)90分以内の割合

指標意義
急性心筋梗塞は、発症後可能な限り早期に再灌流させる事が予後の改善に重要です。来院からバルーンやステントを用いたPCIを施行し再灌流するまでを迅速に行うことは、急性心筋梗塞治療の質の高さを知ることが出来ます。


  • 分母:急性心筋梗塞で緊急にPCI(経皮的冠動脈形成術)を施行した患者数
  • 分子:急性心筋梗塞で病院到着からPCIまでの延べ時間が90以内の患者数

Door to balloon時間(来院からバルーン拡張までの平均時間)90分以内の割合

コメント
2016年度は82.9%と高い値でしたが、年々低下してきています。ただし、詳しく解析すると、治療までに要する時間の中央値に大きな変化はありませんでした。通常の急性心筋梗塞の患者さんは激しい胸痛で発症し救急車で搬送されるのですが、時に一般外来にて胸痛以外の症状で受診していることがあり、診断までに時間を要します。このような患者さんが年々増えていることが低下の原因でした。個々の症例に応じて、速やかで適切な治療を達成できるように努めていきます。

Ⅱ-5:救急車・ホットラインの応需率

指標意義
救急隊からの搬送の要請に対して、どれだけの救急車の受け入れが出来たかを示す指標で、病院の救急診療を評価する指標の一つです。また今後も救急医療体制を整備し、地域医療への貢献を示す指標にもなります。


  • 分母:救急車受け入れ要請件数(救急車で来院した患者数および受入拒否患者数)
  • 分子:救急車で来院した患者数

救急車・ホットラインの応需率

コメント
不応需の原因としては、主要な3項目があります。(1)手術室使用ストップ(麻酔科の問題)、(2)当該診療科の手術・処置・重症患者対応、(3)初療室満床があげられます。救急室の運用に関しては、当科スタッフ、看護師による初療室とプライマリーケアセンターの効果的な運用で改善されてきています。しかし、当科だけでは100%を目指すことはできません。病院全体で取り組んでいく必要があります。

Ⅲ-1:急性心筋梗塞患者における退院時処方率(抗血小板薬・βブロッカー・ACE-I/ARB・スタチン)

指標意義
急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する「冠動脈」に血栓が生じることで、心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。病状が安定し退院した後に、病気が再発することを予防するために、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン』では、抗血小板薬、βブロッカー、スタチン、ACE-I/ARB等のうち、必要なものを投与することが推奨されています


  • 分母:急性心筋梗塞で入院した症例数
  • 分子:分母のうち、退院時に薬剤が処方された症例数

▽抗血小板薬

急性心筋梗塞患者における退院時処方率(抗血小板薬)

▽βブロッカー薬

急性心筋梗塞患者における退院時処方率(βブロッカー薬)

▽ACE-I/ARB

急性心筋梗塞患者における退院時処方率(ACE-I/ARB)

▽スタチン

急性心筋梗塞患者における退院時処方率(スタチン)

コメント
抗血小板薬とスタチンは全例に対して投与することが原則ですので、何らかの事情がない限りは内服してもらっています。βブロッカー薬とACE-I/ARBについては、病態に応じてとなりますが積極的に投与しています。これらの薬剤の有効性をスタッフが共有することで全国平均を上回る高い処方率を達成しています。

Ⅲ-2:急性心筋梗塞患者におけるACE-I/ARBの投与割合

指標意義
急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する「冠動脈」に血栓が生じることで、心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。ACE-Iについては、心臓から全身に血液を送り出す機能が低下している患者、心不全を有するリスクの高い急性心筋梗塞患者に対して、発症24時間以内に投与することが推奨されています。ARBについては、ACE-Iが不適応である急性心筋梗塞患者に対して投与することが推奨されています


  • 分母:急性心筋梗塞で入院した症例数
  • 分子:ACE-IもしくはARBが投与された症例数

急性心筋梗塞患者におけるACE-I/ARBの投与割合

コメント
心筋梗塞に伴う心機能低下や心不全予防のために有効です。血管拡張作用から血圧低下をきたしてしまうため、血圧が低めの患者さんには使いづらい薬剤ですが、予後改善のために積極的に投与していますので、全国平均よりも10ポイント以上高い処方率となっています。

Ⅲ-3:急性心筋梗塞患者における当日アスピリン投与割合

指標意義
アスピリンは抗血小板作用があり、急性心筋梗塞の予後を改善するのに有効であることは多くの臨床研究で明らかにされています。適切に診療プロセスが把握できるかを問う指標でもあります。


  • 分母:急性心筋梗塞で入院した症例数
  • 分子:入院当日にアスピリンが投与された症例数

急性心筋梗塞患者における当日アスピリン投与割合

コメント
急性心筋梗塞における治療の第一選択は緊急冠血行再建です。救急治療室でアスピリンなどを投与して、心臓カテーテル検査室で緊急検査治療となります。出血リスクが高い、または冠血行再建の適応とならないような場合などを除いて、速やかにアスピリンを投与しています。以前から内服され、前医で投与されていることもありますので、統計上は上記の結果となっています。

Ⅲ-4:脳卒中患者の退院時処方率(抗血小板薬・スタチン)

指標意義
脳梗塞再発予防には、抗血栓療法と内科的リスク管理が重要です。非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など)や非心原性一過性脳虚血発作(TIA)では、再発予防のため、に抗血小板薬の投与が推奨されています。また、内科的リスク管理の一つとして、脂質異常症のコントロールが推奨されており、薬剤、特にスタチンを用いた脂質管理は血管炎症の抑制効果も期待できます(脳卒中治療ガイドライン2015)。


  • 分母:18歳以上の脳梗塞かTIAの診断で入院した症例数
  • 分子:退院時に処方された症例数

▽抗血小板薬

脳卒中患者の退院時処方率(抗血小板薬)

▽スタチン

脳卒中患者の退院時処方率(スタチン)

コメント
脳梗塞かTIA(虚血性脳卒中)では、再発予防のために長期的な抗血栓療法の継続が必要です。動脈硬化を背景に発症するラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞では、アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなどの抗血小板薬が用いられます。スタチンには単に悪玉コレステロールを低下させるだけでなく、多面的な保護効果があるため積極的に用いています。抗血栓療法中の出血性合併症を予防する上では十分な血圧管理も重要です。

Ⅲ-5:脳卒中患者のうち第2病日までに抗血栓治療を受けた患者の割合

指標意義
「脳卒中」は、大きくは脳の血管が詰まる「脳梗塞(脳血栓症・脳塞栓症・一過性脳虚血発作)」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」や「くも膜下出血」に分けられます。脳血管がつまって脳梗塞が再発することを防止するために、48時間以内に1日あたりアスピリン160~300mgの経口投与が強く推奨されています。


  • 分母:脳梗塞かTIAと診断された18歳以上の入院患者数
  • 分子:第2病日までに抗血栓療法を施行された患者数

脳卒中患者のうち第2病日までに抗血栓治療を受けた患者の割合

コメント
急性期脳梗塞では、再発・進行の予防を目的として、内服もしくは点滴による抗血栓療法が行われます。分子である「抗血栓療法」には内服薬のアスピリン、クロピドグレル、点滴薬のオザグレル、アルガトロバンは含まれていますが、シロスタゾール、新規抗凝固薬の内服やヘパリン点滴は含まれていません。ですから真に抗血栓療法を受けた割合はもっと高くなります。出血性合併症が少ないので、近年では心原性脳塞栓症に新規抗凝固薬、非心原性脳梗塞にシロスタゾールを選ぶ機会が増えています。専門医が最新の知見に基づいて、最適な治療選択を行っています。

Ⅲ-6:心房細動を診断された脳卒中患者への退院時の抗凝固薬の処方

指標意義
心房細動は、心臓の拍動が乱れ、血液が心臓内に停滞する状態のことです。心房細動は高齢者に多く見られ、心房細動がある人は、ない人に比べて脳梗塞を発症しやすくなります。?また、心房細動が原因で心臓にできる血栓は比較的大きく、それが脳にとぶと、脳の太い血管をふさぎ、脳梗塞(心原性脳塞栓症)が起こり、脳が受けるダメージの範囲は広く、死亡率や寝たきりなどの介護が必要な重度の後遺症が残る可能性が高くなります。?原因となる血栓ができないように、弁膜症を伴わない心房細動のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者の再発予防に、血液凝固因子に作用して血栓を防ぐワーファリン等の抗凝固薬を処方することを推奨しています。


  • 分母:脳梗塞かTIAと診断され、かつ心房細動と診断された18歳以上の入院患者数
  • 分子:退院時に抗凝固薬を処方された患者数

心房細動を診断された脳卒中患者への退院時の抗凝固薬の処方

コメント
脳梗塞かTIA(虚血性脳卒中)では、再発予防のために長期的な抗血栓療法が行われます。不整脈などが原因で出来た心臓内血栓が原因の心原性脳塞栓症の再発予防には、抗凝固薬が極めて有効です。非弁膜症性(弁膜症を伴わない)心房細動に対しては、ワルファリンよりも出血性合併症が少ない、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなどの新規抗凝固薬を優先的に用いています。

Ⅲ-7:脳卒中患者に対する地域連携パスの使用率

指標意義
急性期脳卒中の治療成績に差が出る要因のひとつはリハビリテーションです。急性期リハビリテーションの有無が社会復帰等、その後の生活に影響を及ぼします。しかし、全ての患者を急性期病院でケアする体制を整えるのは難しく、また、回復期リハビリテーション病院等、リハビリ専門の病院の方が充実したケアを受けられることが考えられるため、地域の病院と連携した診療が求められています。


  • 分母:脳卒中で入院した症例
  • 分子:「地域連携診療計画加算」を算定した症例

脳卒中患者に対する地域連携パスの使用率

コメント
急性期から積極的なリハビリテーションを行うことで、分母である「脳梗塞で入院した症例」のうち、6割以上の方は直接自宅へ退院することができます。中等度~重症の脳梗塞で長期のリハビリテーションを要する方が回復期リハビリテーション病院へ転院され、地域連携診療計画加算の対象となります。

Ⅲ-8:脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合

指標意義
脳梗塞により生じた運動・感覚障害等による安静臥床が長期化すると、筋萎縮・筋力低下、関節拘縮(関節を動かさないために,次第に関節の動く範囲が狭くなった状態のこと)等の症状があらわれる廃用症候群が起こります。廃用症候群を予防し、早期に日常生活を行えるようになって社会復帰が図れるようにするために、十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことを強く勧めています。


  • 分母:脳卒中で入院した症例
  • 分子:入院後早期に脳血管リハビリテーションが行われた症例数

脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合

コメント
脳梗塞を含む脳卒中では、機能回復、後遺症の軽減を目的とした、急性期リハビリテーションを行います。早ければ当日から、非常に重篤な方でも数日以内にベッドサイドのリハビリを開始します。できるだけ早期から離床を図り、社会復帰が可能となる患者さんを増やすべく、2014年から休日の急性期リハビリテーションを開始し、リハビリ治療体制の強化を図っています。

Ⅲ-9:喘息入院患者のうち吸入ステロイドを入院中に処方された割合

指標意義
気管支喘息の患者さんの入院治療では、全身性ステロイド治療とともに吸入ステロイド治療を開始することが重要になります。吸入ステロイド薬には、①喘息症状を軽減する、②生活の質(QOL)および呼吸機能を改善する、③気道過敏性を軽減する、④気道の炎症を制御する、⑤急性増悪の回数と強度を改善する等の効果があり、副作用は全身性ステロイド治療よりも軽減されるため治療薬の要となっています。


  • 分母:5歳以上の喘息患者のうち、喘息に関連した原因で入院した患者数
  • 分子:分母のうち、入院中に吸入抗炎症剤の処方を受けた患者数

喘息入院患者のうち吸入ステロイドを入院中に処方された割合

コメント
分母が5歳以上の喘息患者が対象とされていますが、小児科の入院患者さんを含めた場合は吸入ステロイドの処方がなされないケースも多いと考えられるため、データが低く出る可能性が高いです。新規に喘息の診断で治療を導入する患者には、ほぼ全例吸入ステロイドを処方していますが、喘息がある患者さんが手術をされたり、他の疾患で入院される場合は、前医の薬剤を持参で使用される場合があり、入院中に吸入ステロイドを処方しないケースもあります。上記データは実臨床を示しているものと考えられ、処方に関しては問題ないものと考えます。 最近は開業医の先生方からの吸入処方も増えており、当院での入院中の新規処方は減る傾向が示されております。

Ⅲ-10:入院中にステロイドの経口・静注処方された小児喘息患者の割合

指標意義
小児気管支喘息については、急性発作時の医療機関での対応について、家庭での対処状況を把握した上で発作強度を評価し、中発作は外来治療、大発作と呼吸不全は入院治療で対応することとされています。中発作ではβ2刺激薬等気管支拡張作用を持つ薬剤では対応できない場合、大発作と呼吸不全では初期段階から、経口・静注ステロイドの投与が標準的治療として示されています。ステロイドの全身投与は、呼吸困難が改善したら中止し、できる限り短期の使用にとどめることとされています。


  • 分母:2歳~15歳の喘息患者のうち、喘息に関連した原因で入院した症例数
  • 分子:分母のうち、入院中に全身ステロイドを処方された症例数

入院中にステロイドの経口・静注処方された小児喘息患者の割合

コメント
当院における急性発作時の入院適応である重症度は中発作以上であり、全例でステロイドの静注または経口投与が必要な患児でした。喘息治療コンプライアンス不良による繰り返す喘息発作の場合は、重症度が軽症であっても教育目的での入院としています。例年同様 大部分は、季節の変わり目やウイルスやマイコプラズマなど感染を契機に喘息発作が生じた症例でした。

Ⅲ-11:大腿骨頸部骨折患者に対する地域連携パスの使用率

指標意義
大腿骨頚部骨折は、足の付け根の骨折で高齢者に多く転倒などで受傷します。寝たきりになることが多いため、早期に手術し、運動開始、離床を図ります。これまでは、1つの病院で手術とリハビリテーションを行っていましたが、地域の病院が共同で治療計画を立て、それぞれの得意分野を担当する「地域完結型医療」を推進しています。


  • 分母:大腿骨頸部骨折で入院し、大腿骨頸部の手術を受けた症例
  • 分子:「地域連携診療計画加算」を算定した症例

大腿骨頸部骨折患者に対する地域連携パスの使用率

コメント
聖マリア病院では近隣のリハビリテーション病院との連携が充実しているため、安心して手術、リハビリ、在宅復帰を目指すことが可能です。

Ⅲ-12:大腿骨頸部骨折の早期手術割合

指標意義
大腿骨頸部骨折は高齢者に好発する骨折であり,機能予後のみならず,生命予後に影響すること が知られている.大腿骨頸部骨折は早期に手術を行うことで術後の局所合併症が減少すると言われており、手術は入院後早期に実施されることが推奨されている。


  • 分母:大腿頸部骨折で入院し、大腿骨折の手術を受けた症例
  • 分子:入院2日以内に手術を受けた患者数

大腿骨頸部骨折の早期手術割合

コメント
早期手術に影響する因子として患者因子、施設因子、曜日因子の3つがあると言われています。聖マリア病院は多くの診療科を有する救急病院のため基礎疾患のある患者が集まり、術前に全身状態のコントロールが必要になる患者が多く存在します。また他の診療科の緊急手術も多く、準緊急手術の適応である本手術がすぐには出来ないという影響もあります。そのために全国平均よりは低くなっていると推察されます。最近10年を振り返ると徐々に待機日数が短縮しています。

Ⅲ-13:大腿骨転子部骨折の早期手術割合

指標意義
大腿骨頚部・転子部骨折はご高齢の方が受傷することが多く、動けない状態が長いほど筋力は低下し、褥瘡(床ずれ)、肺炎、深部静脈血栓症・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)などの合併症を起こしやすくなるため、全身状態が許すならできる限り早期に手術を行い(手術で骨折部を固定することで痛みの軽減が期待されます)、離床、リハビリテーションを始めるべきと考えられています。


  • 分母:大腿骨転子部骨折で入院し、大腿骨折の手術を受けた症例
  • 分子:入院2日以内に手術を受けた患者数

大腿骨転子部骨折の早期手術割合

コメント
早期手術に影響する因子として患者因子、施設因子、曜日因子の3つがあると言われています。聖マリア病院は多くの診療科を有する救急病院のため基礎疾患のある患者が集まり、術前に全身状態のコントロールが必要になる患者が多く存在します。また他の診療科の緊急手術も多く、準緊急手術の適応である本手術がすぐには出来ないという影響もあります。そのために全国平均よりは低くなっていると推察されます。最近10年を振り返ると徐々に待機日数が短縮しています。

Ⅲ-14:シスプラチンを含むがん薬物療法後の急性期予防的制吐剤の投与

指標意義
がん薬物療法を行う医療者のstate-of-the-art は、最適な治療方針のもとに適切な薬物療法を選択し、安全に、苦痛と後遺症を最小限にしながら、治療強度を維持して最大限の効果を導くことである。がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐は、催吐の機序が解明され、そこに作用する薬剤が開発された現状においても、患者が苦痛と感じる代表的な副作用であるため、これを適切に制御することは重要な意味をもつ。


  • 分母:18歳以上の症例で、入院にてシスプラチンを含む化学療法を受けた、実施日数
  • 分子:分母の実施日の前日または当日に、5HT 3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3剤すべてを併用した数

シスプラチンを含むがん薬物療法後の急性期予防的制吐剤の投与

コメント
シスプラチンは抗がん剤の中でも、悪心・嘔吐など消化器症状のリスクが最も高いグループに分類されています。これらのハイリスク群においては、「制吐薬適正使用ガイドライン」(2015年10月【第2版】)でも、5HT 3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3剤併用療法が推奨されています。抗がん剤治療において、副作用への対処は最も重要であり、治療を完遂するうえで重要な指標となります。今回の調査では、当院での3剤併用率は全国平均値を上回る結果であり、ガイドラインに沿った適切ながん治療の実施が示唆されます。
注)5HT 3:セロトニン NK1:ニューロキニン

Ⅲ-15:糖尿病・慢性腎臓病を併存症にもつ患者への栄養管理実施割合

指標意義
入院時に提供される食事には、通常食と治療のために減塩や低脂肪などに配慮した特別食があります。糖尿病や慢性腎臓病の方にとっては、食事も重要な治療のひとつです。
これらの治療を主な目的として入院した時に特別食が提供されるのは当然ですが、他の疾患で入院した際にも併存症に配慮した特別食が提供されることは医療の質の向上につながります。


  • 分母:18歳以上の糖尿病・慢性腎臓病であり、それらへの治療が主目的ではない入院症例の食事
  • 分子:特別食加算の算定

糖尿病・慢性腎臓病を併存症にもつ患者への栄養管理実施割合

入院時に適正な食事を摂ってもらうため、管理栄養士が疾病にあった食事内容を確認し、治療食が必要な患者へ治療食への提案をしています。また、栄養管理が必要な患者さんをピックアップし、栄養サポートチーム(NST)にて評価およびその対策を行っています。これらの活動により、栄養管理実施率は年々上昇しております。今後も更に活動を強化し、全国平均へ早く近づけるようにしていきたいと思います。

Ⅳ-1:広域抗菌薬使用時の血液培養実施率

指標意義
血液培養は菌血症の診断の基本であり、また細菌感染症の重症度判定にも重要です。広域抗菌薬使用は、患者の重症度が高く、多剤耐性菌を考慮した場合の治療選択であり、投与前の採取が望まれます。また、その結果如何では治療選択、期間が大きく異なる場合があり得ます。


  • 分母:広域抗菌薬投与を開始した入院患者数
  • 分子:投与開始初日に血液培養検査を実施した数

広域抗菌薬使用時の血液培養実施率

近年、薬剤耐性が問題視されており抗菌薬の適正使用が求められている。重症例や多剤耐性菌を考慮した初期治療に広域抗菌薬が使用されるが、感染症の原因となる細菌を特定するために血液培養は重要である。創部感染や狭域抗菌薬からの変更時は血液培養を実施しないこともあるが、当院は全国の平均値レベルより高い実施率である。今後も啓発活動を行い、抗菌薬適正使用につながる活動を行っていく。

Ⅳ-2:血液培養検査において、同日に2セット以上の実施割合

指標意義
発熱のごく初期で抗菌薬の投与を開始する前に採取するのが最良ですが、すでに抗菌薬投与中の患者の場合は次回投与の直前に採取します。1回の採取で陽性となる確率は低く、24時間以内に2?3回行うと菌検出率が高まります。


  • 分母:血液培養のオーダー日数(人日)
  • 分子:血液培養のオーダーが1日に2件以上ある日数(人日)

血液培養検査において、同日に2セット以上の実施割合

血液培養2セット率は、前年度と比較すると上昇しているが、全国平均よりかなり低い結果となっている。理由として、本院は新生児・小児の患者数が多く、血液培養では相当量の採血が必要なため、採血量が限られる新生児・小児では2セットの提出が難しい現状である。新生児・小児以外でのデータ(16歳以上の患者)においては、62.3%であり、全国の平均値レベルで検査を実施できている。今後は、新生児・小児以外の患者において100%の2セット率を目標にしていきたい。

Ⅴ-1:核医学検査終了後、24時間以内の読影レポート提出率

指標意義
読影レポートの作成率は、病院の質を評価する指標の一つであり、速く、精度良く作成されていることが望まれます。


  • 分母:核医学検査実施件数
  • 分子:24時間以内に作成された核医学診断レポート件数

核医学検査終了後、24時間以内の読影レポート提出率

可及的速やかに正確な画像情報を臨床現場に提供することを心掛けています。ただし、症例によっては文献の参照や他医師とのディスカッションやコンサルトが必要なことがあり、現状では報告が24時間以降にずれ込む例も生じています。今後も達成率を100%近づけるように心掛けていきます。

Ⅵ-1:手術組織診・生検組織診・細胞診・内視鏡下手術に要する平均日数(TAT:Turn-around Time)

指標意義
病理診断は最終診断となることも多く、よい診療を行うためには、正確な病理診断と迅速な報告書作成が求められます。


  • 分母:手術組織診・生検組織診・細胞診・内視鏡下手術の診断件数
  • 分子:手術組織診・生検組織診・細胞診・内視鏡下手術の報告に要した日数

手術組織診に要する平均日数

生検組織診に要する平均日数

細胞診に要する平均日数

内視鏡下手術に要する平均日数

当院のTATは、「病理細胞診検査室に検体が届いてから、病理診断ないし細胞診断の結果が臨床医に返却(結果送信)されるまで」を指しています。TATは臨床医や患者様のメリット(早期診断・早期治療)に直結する重要な評価項目です。病理診断科の医師や病理細胞診検査室の臨床検査技師の努力により、現在のTATデータは他施設に比べても十分に短く、迅速な診断が実施できていると考えます。
ただし、当院の病理組織診断は2名以上の病理医による診断と確認を行い、細胞診断では複数の細胞検査士による相互確認と必要に応じて細胞診専門医による診断確認を行うことにより、速さだけではなく正確な診断を行うよう心掛けています。複数の診断者による確認を十分に行っているため、これ以上の迅速化は難しいと考えます。
今後も、この結果が維持できるように監視していきたいと考えています。

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