侵襲期全身管理科
診療内容・診療目標
総論的にはICUのうち、侵襲期全身管理科が主に担当する患者は、いわゆるサージカルICUといわれる待機大手術後の患者管理や院内急変(一旦、一般病床あるいはHCUに入院された患者の状態悪化を含む)です。マンパワーの関係上、救命救急センター経由の患者管理もお手伝いしています。特定集中治療管理料4を算定できる基準を満たす病棟として機能しています。形態としては、基本的に治療内容に主治医が主権限を持つopen ICUとなっています。
ICUでの当科の役割は、体液量コントロールを含む循環管理、人工呼吸器管理や抜管までの過程や酸素療法を含む呼吸管理、電解質およびpH管理などの全身管理に関与しています。いわゆる生体の恒常性の維持(ホメオスタシス)が業務の根幹と言ってよいかと考えます。また、術後患者管理では、術後早期回復プログラム(ERAS: Enhanced Recovery After Surgery)を目的とした過度な交感神経緊張状態の回避が肝要と考え、鎮痛・鎮静管理などを迅速に行っています。また、術後の激しい嘔気嘔吐(PONV:postoperative nausea and vomiting) に対しては、主科の指示薬は無効なことも多く、当科での指示より強力な制吐剤投与(ドロレプタン)などを行っています。
安全な患者管理・病院経営などの観点から、当科が介入する具体例は下記のようなものです。
トリアージ赤:要緊急治療群 例
・ DNAR以外の心停止例の対応全般(BLS,ALS, 原因の検索と除去)
・ 緊急気道閉塞例への対処(例:気管挿管、緊急輪状甲状間膜切開、気管切開)
・ periarrest : ショックや致死的となりうる不整脈(例:多形性VT, TdP, CAVB)など、放置しておくと数分から2~3時間以内に心停止となってもおかしくないと考えられる場合への対処。輸液・輸血、電解質補正、同期電気ショック、観血的動脈圧ラインあるいはCV確保など
・ ROSC後のPCAS患者の迅速なTTM開始と関連管理(冷却輸液やシバリング対策、抗痙攣薬投与など)
トリアージ黄:要準緊急治療群 例
・ 不整脈発生時の治療 電解質補正、輸液(hypovolemiaによるAF)、輸血、抗不整脈薬の開始
・ ショック状態患者へのNAD, AVP, DOBなどの増減や開始・中止やステロイド補充
・ 術後患者:指示書の薬剤だけでは鎮痛が不十分な場合の鎮痛対策およびシバリングがあり、脳・心筋虚血のリスク大と考えられる場合の体温管理およびシバリング対策。尿量低下時の輸液負荷
・ 気管チューブの位置異常の修正
・ 不穏時、体動により危険があると判断される場合の鎮静・不適切な指示の変更
トリアージ緑:非緊急治療群 例
・ 緊急性は高くない治療(特に準夜・深夜帯)や主治医不在時など
・ NPPV中止を含む人工呼吸器設定調整変更
・ 主治医が外来・外勤などで不在のときなどの予定抜管(事前に主治医と合意あるいは周知)
・ 血糖コントロール 特にBS>250 mg/dL以上
・ 電解質補正一般
・ 利尿薬指示
・ 夜間の眠剤指示、せん妄対応
・ 不要と思われる「クーリング指示」の廃棄
・ 高価な薬剤の使用の中止、変更
・ 非挿管患者の酸素投与量の調整・中止
・ 術後患者に対する制吐
・ ICU退室延期の提言
取り扱う主な疾患
2022年度のJIPAD(日本集中治療医学会が実施する国内大規模レジストリー)への提出データでは旧ICU側への年間入室者数は成人728人、小児13人の計741人でした。いわゆる待機術後は成人646人、小児12人の計658人で入室の88.8%を占めています。病棟からの入室は65人(成人64人、小児1人、うち成人11人は心停止蘇生後)で8.8%、主に救急外来から一旦ハイケア系に入院後に状態悪化したためICU入室となった症例は残り2.4%となっています。臓器系統別では、成人では下記表1のように、消化管(28.6 %)、神経系(19.1 %)、心血管(17.0%)、呼吸器(12.0%)、筋骨皮膚(9.5%)、産婦人科(8.5%)で約95%となっています。
また、表2に示すような手術(疾患)が上位を占めています。
小児については、過半数は脳外科術後です。

2023年度年報より/更新日時:2025年7月7日
症例実績
表2(取り扱う主な疾患)と重複する部分は割愛します。ここでは成人のICU退室時の転帰について紹介します。待機手術患者がメインなので、成人に関しては一般病棟への退室が628人(約84.8%)となっています。HCU系への退室は85人(11.5%)で、死亡退院は21人(2.8%)となっています。
実際の死亡率(表4)は、いくつかの方式による予測死亡率(表3)と比較しても、想定以下となっています。ICU退室後の死亡を含めた退院時死亡率は47人(6.3%)ですが、ほとんどは心停止蘇生後を含む「病棟急変」患者が占めているようです。
Funnel plot による評価(表5:横軸に症例数、縦軸に重症度スコアによるStandardized mortality ratio( SMR) をプロットしたもの。水色と青色の点線は、それぞれ95% と99.8% の管理限界線を表しており(Funnel 状となる)、点線の内側に点が存在する場合は、今回のデータ収集施設内で標準的なSMR であると考えられる)。では、死亡率は想定内となっており、ICU管理の質は決して悪くはないものと考えられます。人工呼吸管理の割合はサージカルICU であるがために全国平均と比べれば低いのは当然ですが、再挿管率は全国平均を大きく下回る優秀な成績となっています(表6)。




2023年度年報より/更新日時:2025年7月7日
手術実績
※症例実績をご覧ください。
所属医師

侵襲期全身管理科診療部長
漢那 朝雄かんな ともお
- 出身大学
- 九州大学
- 卒業年
- 1992年
- 所属医局
- 九州大学麻酔・蘇生学講座
- 学位(取得大学)
- 医学博士(九州大学)
- 専門医等の資格
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- ・日本麻酔科学会麻酔科専門医
- ・日本麻酔科学会麻酔科認定医
- ・日本集中治療医学会集中治療専門医
- ・厚生労働省認定麻酔科標榜医
- ・医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
- 学会役員等
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- ・福岡市消防局NBC災害支援アドバイザー
- ・日本蘇生協議会JRC蘇生ガイドライン2020普及・教育のための方策共同座長
- ・改訂6版救急蘇生法の指針2020医療従事者用編集委員
- ・日本臨床救急医学会バイスタンダー体制検討ワーキンググループ委員
- ・帝京大学福岡医療技術学部客員教授
- 専門・研究分野
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- ・麻酔、救急、集中治療、災害医学


















