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栄養支援管理部

概要

 当院は救急病院であることから、急性疾患や外傷、慢性疾患の急性増悪といった、疾病の活動性が高い患者さんが多く入院されており、治療や検査も侵襲が大きなものが行われることが少なくありません。
 活動性が高い疾病や検査・治療による侵襲は、その程度に差はありますが体タンパク異化を亢進させ、サルコペニアの増悪を招きます。高齢化に加え、これらの疾患・医療侵襲に伴うサルコペニアの進行・増悪は、活動性低下だけでなく、治療効果の低下や合併症発症の増加、在院期間延長、予後の悪化の一因となります。これに対して入院患者への適切な栄養評価と栄養不良増悪リスク患者への個別栄養サポートは、治療成績を改善させることが広く認知1)されており、当院でも適切な栄養管理に力を入れています。栄養支援管理部は、主治医や病棟スタッフからの依頼により、患者さんの栄養状態と栄養管理の状況を評価し、積極的な回復促進に向けてより適切な栄養管理をサポート提案するNST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)を主導する部署です。当院のNSTは「患者安全第一を基本とした適切な栄養管理を実践する」という目標を掲げて活動しています。栄養不良がさまざまな疾病や合併症を発症し、患者さんの入院生活における安全を脅かすだけでなく、栄養管理が適切でない場合も合併症発症の一因となります。そのため、栄養不良が惹起する有害事象だけでなく、栄養管理によって起こり得る合併症に関しても極力予防を促すような栄養サポートをしています。
 疾病や入院生活における活動性の低下によって筋力低下した状態から元の状態に回復するには、筋力低下までに要した時間の3倍以上を要するといわれており2)、これを極力予防するための栄養サポートは早期から行うことが予後改善に寄与する1)とされるため、栄養支援管理部を設置した2017年以降、入院早期からの速やかな栄養サポートの依頼を呼び掛けるとともに、18年からは褥瘡患者に対するNST栄養評価の院内ルール化を図り、入院時早期からの積極的な栄養サポートに対する啓発活動を行ってきました。表1に示したように当院の栄養不良患者に対する入院からNST栄養サポート開始までの平均期間は徐々に短縮してきています。栄養サポート開始までの期間短縮とともに栄養不良患者の平均入院期間も改善傾向にあり、われわれが実践している栄養不良患者への個別栄養サポートは入院期間短縮に寄与できていると自負しています。
 当院のNST活動で急性期疾患の栄養サポートを行う際に重要視していることは、可能な限り早期から腸管使用を促すということと、患者さんの体格から算出される必要エネルギー目安量の充足に向けて管理するということです。
 急性期の疾患侵襲やさまざまな治療侵襲は腸内環境を悪玉菌有意の腸内環境(Dysbiosis)へ変化させることが分かっています3)。また不要な絶食管理や腸管使用できるにもかかわらずTPN主体の管理を行うなど、腸粘膜への刺激が乏しい栄養管理は腸粘膜の活性を低下させ4)、GALT(Gut Associated LymphaticTissue)の機能低下によって感染性合併症の発症が懸念されます。これらを考慮し当院のNSTでは早期からの積極的なSymbiotics導入と速やかな腸管使用開始を呼び掛けています。
 体格から算出される必要エネルギー推定量の充足もサルコペニア予防や回復促進に向けて非常に重要です。食事摂取という「行為」は可能であっても、必要十分なエネルギー量の摂取が確保できていなければ栄養不良、サルコペニアは進行し、回復遅延が懸念されます。入院前は必要十分な量の経口摂取ができていた方であっても、急性期疾患や医療侵襲によってサルコペニアが進行し、十分な経口摂取が困難となってしまう方も数多く認められます。そういった方に対しては、一時的に経管栄養管理を導入し、まずは必要十分なエネルギー量・たんぱく質量の摂取を腸管使用によって確保しつつ、積極的に四肢のリハビリテーションを行いながら回復に向けて管理していくことで入院前と同様の食事摂取まで回復可能となる方もいます。
 なお、体格から算出される必要エネルギー量はあくまでも「推定量」であり、病状や病態によって変化するため、単に算出したエネルギー量に相当する量が投与されていれば十分とは限りません。炎症所見や侵襲によって変化する血糖値、さらに各種栄養指標の推移も含めて定期的にモニタリングしながらエネルギー投与量だけでなく、たんぱく質や微量元素等の栄養素の調整も必要です。栄養は投与(摂取)しておけば問題ないわけではなく、適切に消化・吸収・代謝されないと意味がないことを個々の患者さんで繰り返し確認しつつ活動しています。

1) Philipp Schuetz,et al:The Lancet (393)p.2312-2321,2019
2) Andreas Vigelso,et al:J Rehabil Med (47)p.552-560,2015
3) Shimizu K,et al:J Trauma (60)p.126-133,2006
4) Tanaka Y,et al:Kurume Med J(50)p.131-137,2003

実績


2023年度年報より/更新日時:2025年6月20日

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