移植医療支援室
概要
2010年7月に改正臓器移植法が施行され、全国で脳死下・心停止下の臓器提供が増加していますが、欧米や、お隣の韓国と比べてもはるかに少なく、移植で助かる命がわが国では失われているのが現状です。福岡県における救命救急医療の一翼を担う当院は、20年4月に移植医療支援室を設置しました。
患者さんの尊い臓器提供意思を生かし、患者さん、そのご家族と医療スタッフを支援し、また他の臓器提供医療機関との連携関係の構築を目的としており、当院では22年3月までに5例の脳死臓器提供がありました。
移植医療支援室は、常に患者さんに対し安全・安心な移植医療を提供するために、当院のみならず他の臓器提供施設との連携を強化し、臓器提供体制の構築を行います。また、移植外科ならびにレシピエント移植コーディネーターと患者さん、そのご家族に対しての移植前後のサポートを提供します。病院内では、移植医療に携わる職員間の情報交換や連携を図り、移植医療がより身近な存在になるよう取り組みます。当室は、「臓器提供者」と「移植患者」の双方の立場で移植医療に関わるさまざまな共通の課題について取り組む体制を取っており、それらの情報を院内ならびに地域に発信し、移植医療の正しい情報や知識を筑後地域へ普及させることを目指します。
移植医療は、「臓器を提供する人」と「移植を受ける人」の尊い二つの意思を結び合わせることで成り立っています。
当室は当院の脳死下臓器提供管理委員会等と協力しながら、医療の限界のため残念ながら救命が果たせない患者さんご自身の臓器・組織提供に関わる希望を尊重し、かつ患者さんやご家族の意思を十分に生かすべくサポートを行います。レシピエント移植コーディネーターが各部門と連携を取りながら、移植治療希望の患者さん・ご家族の診療や心身のケアを実施します。また、「臓器・組織提供や移植医療について知りたい」などの質問に対しても、当院が一員として参画した「一般財団法人久留米・筑後移植医療推進財団」と協力して対応してまいります。
移植医療支援室のスタッフ
実績
「移植医療支援室」を中心に、生体腎臓移植の患者さんを紹介いただいた医療機関4施設の院長もしくは紹介元の医師(病院)に面会を行い、紹介いただいた患者さんの現状報告を行いました。
- ・JCHO久留米総合病院(腎臓内科)
- ・はせ川クリニック(太宰府市の透析施設)
- ・吉武泌尿器科医院(久留米市内)
- ・宮崎内科循環器科(久留米市内)
他にもリストアップを行っていましたが、COVID-19の第6波もあり訪問を一旦中止。2022年に訪問を行う予定。
臓器移植に関する啓発・周知活動
終末期医療および臓器提供に対する知識の自己確認ならびに普及・啓発活動に主眼を置き、院内外において「人生の最終段階における医療(終末期医療)」と「臓器提供」についてのアンケート調査を実施。医療関係者・学生48,000人、住民1,500人の回答協力を得て集計作業を完了し、分析結果を各協力施設に持参し、協力に関わる謝意ならびに資料持参にてフィードバックを行いました。
<実施施設>
聖マリア病院・聖マリアヘルスケアセンター職員、聖マリア学院大学学生・教職員、天神会新古賀病院職員、古賀国際看護学院学生、松風会内藤病院職員、久留米大学病院職員、大牟田市立病院職員、JCHO久留米総合病院職員、嶋田病院職員、高邦会高木病院職員、8医師会、ロータリークラブ久留米北、久留米商工会議所、久留米商業高等学校学生・教職員
腎臓移植
当年度は、対象者は生体腎臓移植6例(2018年度からの累計51例)、脳死下臓器提供実績1例実施。
「腎移植に関する相談窓口」を開設し現在広報・運用中
腎臓移植に関する相談に幅広く対応する電話相談窓口を昨年度開設し、デジタルサイネージを利用し広報活動中。
日本臓器移植ネットワークへの2021年度臓器提供連携事業の補助金申請
<目的>
この助成金は、脳死下および心停止後臓器提供の経験が豊富な施設から、 臓器提供の経験が少ない施設等に対して、臓器提供時の情報提供や脳死判定等の実際、また人員配置やマニュアル作成のノウハウを助言するとともに、臓器提供事例発生時に医師や検査技師等が応援に駆け付ける等の支援を行うことで、地域における臓器提供体制の構築を図ることを目的とします。
<結果>
前年度も同様に1,000万円の申請を行い、不採用となったため、今回はCOVID-19の環境下での支援体制を重点的に考えて申請を行いましたが、前年度同様に不採用となりました。22年度もさらに内容を精査して申請を行う予定。
人生会議・終末期医療・臓器移植 アーカイブ
移植医療支援室ではYouTubeチャンネルにて、移植医療に関する動画を配信しています。アーカイブはこちらよりご覧いただけます。