がんセンター
概要
聖マリア病院は2008年にがん診療連携拠点病院の指定を受けました。以来、地域医療機関と協働してがん診療に積極的に取り組んでまいりました。
従来は「緩和ケアセンター」と「がん相談・診療支援センター」の二つの組織で運営してまいりましたが、20年4月に「キャンサー・ケア・センター」として組織を統合し、23年4月から組織改編に伴い「がんセンター」と改名し、さらなるがん診療の質の向上を目指して新たな一歩を踏み出しています。聖マリア病院におけるがん患者は年々増加傾向にあり、「ロボット手術」や「がんゲノム医療」等の先進医療を含むがん治療の充実に積極的に取り組むとともに、診断から人生最終段階まで切れ目のない細やかな対応を目指して活動しています。
構成と活動
1.緩和ケアチーム・心不全緩和ケアチーム
主治医や病棟スタッフと協働し、入院中の患者さんの身体や心の痛みや不安、社会的・経済的な不安=「つらさ(苦痛)」を和らげることを目標に活動しています。また、在宅移行や転院調整の支援も行い、患者さん・ご家族の悩みを総合的に解決することに寄与しています。「つらさ」のスクリーニングを行い、毎月20人前後の新規患者さんがスクリーニングされます。毎月100~160人程度の介入を行っており、つらい症状やつらい気持ちをもった患者さんが埋もれないよう心掛けて活動に当たっています。相談内容の約半数は疼痛等の身体症状緩和でしたが、約3割は地域連携、退院調整でした。
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2.がん相談支援センター
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談窓口です。外来診療棟1階「医療に関する相談窓口」に配置され、看護師やソーシャルワーカーなどの相談員が対応しています。患者さんやご家族のほか、地域の方などどなたでも無料でご利用いただけます。治療や療養生活全般、地域の医療機関などについて相談することができ、当院に受診されていない方や匿名での相談も可能です。患者さんとご家族がともに語り合うがんサロン「ルルド」も担当し、ミニレクチャーの開催とピアサポートを支援しています。
※がん相談支援センターこちら(がんセカンドオピニオンはこちら)
3.緩和ケア外来
地域医療機関と連携しながら、緩和ケア病棟(聖母ホスピス病棟)に入院予定の患者さんや退院後の患者さんに対して、進行するがんの症状緩和を行い、自宅での日常生活が快適に過ごせるようにサポートする外来です。
※緩和ケア外来の詳細はこちら
4.がん看護外来
当院を受診中の患者さんを対象に、「がんとどのように向き合っていけばいいのか分からない」「がんのつらい症状で困っている」「治療の説明を聞いたがよく分からない」といったさまざまな相談に、がん看護専門看護師・緩和ケア認定看護師が問題の解決に向けてサポートします。
※がん看護外来の詳細はこちら
5.聖母ホスピス病棟
ご自宅での症状緩和や生活が困難な患者さんにおいては聖母ホスピス病棟の利用が可能です。聖母ホスピス病棟においてもコロナ禍の影響を受け面会制限を行わざるを得なくなりましたが、症状緩和のできている患者さんにおいては積極的に在宅療養をお勧めし、ご家族との大切な時間を確保できるように心掛けています。2021年は26%の患者さんが在宅移行することができました。
※聖母ホスピス病棟の詳細はこちら
6.外来化学療法室
外来化学療法室では、がん薬物療法認定薬剤師やがん化学療法看護認定看護師など、主治医以外にもさまざまな職種が問題の解決に向けてサポートし、患者さんに安全・安心な治療を提供できるように心掛けています。がん化学療法レジメン件数の増加に伴い、外来化学療法実施件数は300件を超えてきており、外来化学療法室リニューアルを検討中です。
※外来化学療法室の詳細はこちら
7.キャンサーボード運営会議
がん患者さんの病態に応じたより適切ながん診療を提供するため、多分野・多職種の専門的知識および技能をもった医師、看護師、緩和ケアチーム、薬剤師、臨床心理士、臨床検査技師、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカー、医療事務などが症状、診断、治療方針、心理的・社会的サポートなど、よりよい医療に向けて意見を出し合い、集約し実践しています。がん遺伝子パネル検査の適格性はキャンサーボードで検討されています。
※キャンサーボード運営会議の詳細はこちら
8.がんゲノム医療管理室
がん発症において「遺伝子」の変化(変異)は極めて重要であり、遺伝子変異が蓄積した結果がん発症し、さらには治療抵抗性や再発の原因であるとされています。がんゲノム医療は、がんが発生した臓器ではなく、がんの原因となる遺伝子の変異に基づいて診断・治療を行う医療です。近年、分子標的薬の開発と同時に、コンパニオン診断(治療薬を用いる目的で標的遺伝子変異を同定する検査)やがん遺伝子パネル検査(多数の標的遺伝子変異を網羅的に検査)とよばれる遺伝子検査の技術が進歩したことにより、がんゲノム医療が普及しはじめています。我が国においては、がんの個別化医療の実現を目指し、がんゲノム医療の体制づくりが推進され、2019年6月からがん遺伝子パネル検査は保険適用となりました。聖マリア病院は、久留米大学病院を連携先として、21年4月に厚生労働省より「がんゲノム医療連携病院」に指定されました。また、人材教育・育成について慶応義塾大学病院・九州大学病院を連携先としております。
がんパネル遺伝子検査を導入するにあたり適格症例の選定、適切な検体の提出、拠点病院との連絡体制、データ管理、エキスパートパネル(結果解釈のため専門家会議)の開催、患者さんへの説明、二次的所見(生殖細胞における遺伝子変異)を含めた結果に関するカウンセリング等さまざまな課題がありましたが、21年10月キャンサーセンター内に「がんゲノム医療管理室」を新設し、システムを構築することができました。21年度末までに乳がん4症例、膵がん1症例にがんパネル遺伝子検査とエキスパートパネルを終了しました。今後、院内における大腸がん、婦人科がんをはじめとした各種がん症例に拡大する予定です。
がん遺伝子パネル検査を行うことにより現行治療の有効性予測や新たな臨床試験へのアクセスが可能となってまいります。キャンサーセンターではがん患者さんに治療の新たな門戸を開くべく、今後もがんゲノム医療を積極的に推進してまいります。
※がんゲノム医療管理室(がんゲノム医療)の詳細はこちら
化学療法プロトコール委員会
※化学療法プロトコール委員会の詳細はこちら
外部医療機関との連携について
難治性疼痛に対する神経ブロック等、当院で対応していない治療は、久留米大学病院など適切な外部医療機関へご紹介させていただきます。