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肝胆膵疾患

担当スタッフ

 青柳武史、菅野裕樹

診療内容

 肝胆膵疾患に対する手術は腹部手術の中でも高難度の手術が多く、高い技術が必要とされます。当科では、肝胆膵外科学会高度技能医制度による2人の指導医のもと、過去の科学的根拠に基づいた医療(EBM:Evidence Based Medicine)、ならびに我々のこれまでの肝胆膵手術や肝移植手術で積み重ねてきた経験に基づき、それぞれの患者さんにとって最良と思われる手術を十分な説明・同意のもと、実践していきます。また、近年では患者の高齢化が進んでいますが、当科では80歳以上の高齢者であっても積極的な外科治療を行い、良好な成績を残しています。他方、肝胆膵領域の悪性腫瘍は難治性であり、外科治療のみでは満足のいく結果が得られません。当科では当院・内科、放射線科、さらには地域医療機関と連携し、疾患単位ではなく患者さん単位として集学的な治療を行っています。

取り扱っている主な疾患

肝臓

▽対象疾患:肝細胞がん、肝内胆管がん、転移性肝がん、巨大肝血管腫
 肝臓疾患においては肝切除術を必要とする肝細胞がん(2cm以上の単発、あるいは複数個のがん、巨大肝がんなど)のほか、上記疾患が肝切除術の適応となります。この他、肝切除を行わない外科的治療として、小型肝細胞がん、再発肝細胞がんを対象として開腹下、胸腔鏡下、腹腔鏡下にマイクロウェーブ凝固療法、ラジオ波凝固療法を行っています。通常の肝切除術の場合、術後合併症がない場合には術後10日以内の退院を目指しています。また適応疾患における腹腔鏡下手術も積極的に導入しています。

胆道・膵臓

▽悪性疾患
 胆道がん(胆嚢がん、肝外胆管がん、ファーター乳頭部がん)、膵がん(膵管がん、膵腺房細胞がん)、嚢胞性膵腫瘍(膵管内乳頭粘液腫瘍、粘液性嚢胞性腫瘍、漿液性嚢胞性腫瘍など)、膵内分泌腫瘍。
▽良性疾患
 胆石症(胆嚢結石、総胆管結石)、膵胆管合流異常症。 胆道・膵臓領域の最も多い悪性疾患(がん)の手術は、膵頭十二指腸切除術です。膵頭十二指腸切除は大きな手術で、手術時間が長く、術後合併症の頻度が高いことが問題となっていましたが、近年の技術の進歩により安全性は向上してきています。術後の入院期間も長く、以前は1ヵ月以上入院する方がほとんどでしたが、最近では合併症がない場合、多くの方が10日から2週間で退院されています。

実績(2020年)

肝胆膵悪性腫瘍 計48例

膵切除 計23例

  • ・ 膵切除では軽度の合併症(創感染、膵液漏、胃排泄遅延など)を48%で認めました。
  • ・ Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上の合併症は、膵液漏3例(19%)に認めました。
  • ・ 術後入院期間は15.0日(中央値)でした。

肝切除(胆道再建なし) 計24例

  • ・ 手術症例の42%が腹腔鏡下手術でおこなわれていました。
  • ・ 合併症は全体の29%に認め、Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上の合併症は胆汁漏で8%に認めました。
  • ・ 術後入院期間は9.0日(中央値)でした。

胆道再建手術(膵切除を除く) 計5例

  • ・ 合併症は全体の40%に認め、Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上の合併症は認めませんでした。
  • ・ 術後入院期間は14.0日(中央値)でした。

胆石症に対する胆嚢摘出 計138例

  • ・ 腹腔鏡下手術の割合は92.0%でした。
  • ・ 緊急手術は54例(39.1%)でした。
  • ・ 腹腔鏡下手術から開腹手術に移行した症例は3例(2.4%)でした。
  • ・ 合併症は12.3%に認めました。Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上の合併症(腹腔内膿瘍、術後総胆管結石、腸管損傷)は5.8%でした。
  • ・ 術後入院期間は5日(中央値)でした。

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