血液内科
診療内容・診療目標
福岡県においては比較的血液内科医が存在しますが、福岡市に集中しております。県南部では久留米大学と当院が中核的役割を果たしており、当科は太宰府市~大牟田市、佐賀県東部地区、鳥栖市、大分は玖珠町あたりまでの患者さんに対応しています。高齢化に伴い血液疾患患者さんの年齢中央値も上がってきましたが、年齢のみではなく個々の症例を詳細に検討したうえで症例に応じた最善の対応を行うように努めています。
毎年100人を超える新患患者さんを取り扱い、2021年は98例の新患患者さんを日本血液学会へ症例登録しました。主な疾患群は造血器腫瘍であり、急性白血病10例、悪性リンパ腫27例、骨髄異形成症候群11例、骨髄増殖性腫瘍11例、多発性骨髄腫(MGUS2例含む)10例、止血・血栓異常疾患17例、その他赤血球疾患8例でした。年齢中央値は72歳(19-94歳)と血液疾患患者さんの高齢化が進んでいます。(症例実績 図1、図2)
造血細胞移植
当院には3人の日本造血細胞移植学会移植認定医が所属しており、学会移植認定施設(カテゴリー2)に認定されています。11年~21年の平均で年15例の造血細胞移植を実施し、多発性骨髄腫や再発難治性悪性リンパ腫には主に自家末梢血幹細胞移植を、急性白血病や骨髄異形成症候群には主に同種造血細胞移植を行っています。同種移植は血縁・非血縁(骨髄バンク)骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植のいずれにも対応が可能です。造血幹細胞移植は治癒を目標とする高度な治療である一方で重篤な合併症の管理が必要であり、以前は60代までを上限としていましたが、移植治療技術の向上により74歳までを対象にできるようになり、ご高齢の方でもお元気な方では治癒を目標とできる可能性が出てきています。(症例実績 図3)
先進的診断機器、遺伝子異常検索
院内の臨床検査室には細胞表面抗原分析装置(フローサイトメーター)、染色体分析、FISH、簡易シーケンサーを有し、迅速な血液腫瘍診断を行えるよう整備されています。 近年、固形腫瘍では遺伝子パネル検査が保険適応となり、標準治療が終了した患者さんへの新たな治療の門戸が開かれようとしています。血液腫瘍においても遺伝子検査は極めて重要な検査となりますが、現在、血液腫瘍における網羅的な遺伝子パネル検査は保険適応とはなっていません。21年より九州大学を中心とした多施設共同研究KCNETに参加し網羅的な遺伝子異常を検索することが可能となりました。遺伝子異常を詳細に検査することにより予後や治療反応性の予測に役立つものと期待しています。
新しい試み
成人における急性リンパ性白血病は現在でも難治性の疾患ですが、近年、ブリナツモマブやイノツズマブオゾガマイシン等の抗体医薬品が登場し、移植適応外の患者さんに対する地固め療法や造血細胞移植への橋渡し治療として極めて有用です。ブリナツモマブは比較的有害事象が少ない薬剤ですが、半減期が短いため24時間持続静注を1コース28日間行う必要があるため長期の入院を余儀なくされていました。この度、当科では院内倫理審査を受けたうえで九州初の携帯型持続精密輸液ポンプを用いたブリナツモマブ外来治療を開始しました。2症例に実施し、白血病治療中にもかかわらず貴重な患者さんの日常生活を確保することができました。
COVID-19に対する対応
血液疾患患者は免疫学的に極めて脆弱なためCOVID-19感染は脅威の対象となります。血液内科では外来、入院に関わらず厳重な管理を行っています。ワクチン接種に関しては学会等のガイドラインを参照しつつ積極的に推奨していますが、抗体治療薬投与後や造血細胞移植後の患者さんにおいてはワクチン接種による抗体獲得が不良である可能性もあります。当科では造血細胞移植後の患者さんを対象にワクチン接種後の安全性との抗体獲得状況を評価する多施設共同研究に参加して、実態を検証しています。
地域との連携
これからの患者さん支援は病院ごとではなく地域ぐるみで支援していくことが重要となります。血液内科を標ぼうする先生方は少ないのですが、21年7月に久留米大学血液腫瘍部門と共同して6施設の地域の先生方にご参加いただき、血液内科地域連携の会を開催しました。以後、地域の血液内科医の先生方がどのような対応を頂けるかが明確となり、地域での血液疾患診療の幅が拡大し、患者さんが身近な施設での診療を受けられるようになりました。22年は在宅支援診療所の先生方との連携の会を計画しており、治療困難症例や人生最終段階の患者さんをどのように在宅で支えていくかも検討する予定です。
取り扱う主な疾患
血液悪性腫瘍(急性白血病、悪性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病等)、骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症)、貧血(骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、巨赤芽急性貧血、溶血性貧血等)、血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病等)、止血・凝固異常(後天性血友病等)、後天性免疫不全症候群(HIV感染症、エイズ)。
症例実績
手術実績
※症例実績をご覧ください。
学会発表・論文など(2021年度)
外来体制
診察ブロック D |
月曜 | 火曜 | 水曜 | 木曜 | 金曜 | 土曜 |
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午前 |
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午後 |
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診察ブロック D |
午前 | 午後 |
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月曜 |
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*診療受付時間は8時30分~11時30分まで。診察開始は9時からです。
*完全紹介電話予約制で、新患は事前の予約が必要です。
*北田医師の外来は、手術などの都合によりますので、事前にご相談ください。
*夜間救急は地域医療支援棟1階で受け付けます。
所属医師
がんセンター長
今村 豊いまむら ゆたか
- 出身大学
- 久留米大学
- 卒業年
- 1984年
- 所属医局
- 久留米大学内科学呼吸器・神経・膠原病内科
- 学位(取得大学)
- 医学博士(久留米大学)
- 専門医等の資格
-
- ・日本内科学会総合内科専門医
- ・日本内科学会認定内科医
- ・日本血液学会血液指導医
- ・日本血液学会血液専門医
- ・日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医
- ・細胞治療認定管理師制度協議会細胞治療認定管理師
- ・緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了
- ・緩和ケア研修会新開催指針周知のための指導者研修会修了
- ・医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
- 専門・研究分野
-
- ・造血器腫瘍
- ・造血細胞移植
- ・緩和ケア
- ・HIV感染症
血液内科診療部長/外来化学療法室長
橋口 道俊はしぐち みちとし
- 出身大学
- 久留米大学
- 卒業年
- 1993年
- 所属医局
- 久留米大学内科学講座血液・腫瘍内科部門
- 学位(取得大学)
- 医学博士(久留米大学)
- 専門医等の資格
-
- ・日本内科学会総合内科専門医
- ・日本内科学会認定内科医
- ・日本血液学会血液専門医
- ・日本血液学会血液指導医
- ・日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医
- ・細胞治療認定管理師制度協議会細胞治療認定管理師
- ・医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
血液・腫瘍内科センター長/聖マリア病院キャンサーボード運営会議長
岡村 孝おかむら たかし
- 出身大学
- 九州大学
- 卒業年
- 1975年
- 学位(取得大学)
- 医学博士(九州大学)
- 専門医等の資格
-
- ・日本内科学会総合内科専門医
- ・日本内科学会認定内科医
- ・日本血液学会血液指導医
- ・日本血液学会血液専門医
- ・日本感染症学会感染症専門医
- ・緩和ケア研修会修了
- 学会役員等
-
- ・日本血栓止血学会 評議員
- 専門・研究分野
-
- ・臨床血液学
- ・血栓止血学
血液内科主任医長
山崎 聡やまさき さとし
- 出身大学
- 九州大学
- 卒業年
- 1997年
城島 浩人じょうじま ひろと
- 出身大学
- 久留米大学
- 卒業年
- 1987年
- 所属医局
- 久留米大学内科学講座血液・腫瘍内科部門
- 学位(取得大学)
- 医学博士(久留米大学)
- 専門医等の資格
-
- ・日本内科学会総合内科専門医
- ・日本内科学会認定内科医
- ・日本血液学会血液指導医
- ・日本血液学会認定血液専門医
- ・医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
- ・緩和ケア研修会修了
吉田 奈央よしだ なお
- 出身大学
- 産業医科大学
- 卒業年
- 2013年
- 所属医局
- 佐賀大学血液・腫瘍内科
- 学位(取得大学)
- 医学博士(佐賀大学)
- 専門医等の資格
-
- ・日本血液学会血液専門医
- ・日本内科学会認定内科医
- ・医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
- ・緩和ケア研修会修了
- ・産業医