職員たちの未来像future

聖マリア病院 職員たちの未来像

聖マリア病院の開設時に29人だった職員は、
現在総勢約2600人(雪の聖母会全体)。
それぞれの部署で、
患者さんのために従事しています。

職員たちが思い描く、
これからの病院や、
そこで働く自身の未来像を聞きました。

救急科診療部長 患者・
家族サポートセンター長
古賀仁士
KOGA Hitoshi
1999年入職
(2001年から3年間、九州大学大学院)

地域のための病院であり続ける

聖マリア病院の救急搬入は年間1万件を超え、休日・夜間の外来では直接来られる患者さんも多く受け入れます。われわれ救急部門が目指す「断らない医療」とは、まずは医者に診てもらいたいと思っている目の前の患者さんに応えることです。その状態を見極めて応急処置をし、かかりつけの先生方や専門治療部門へ橋渡しする役割を担っていると考えています。研修医の指導でも、例えば目の前で倒れた人に対して、専門を問わずに、まずは手を差し出すというジェネラルな志向を持つように伝えています。
少子高齢化は進み、最近では豪雨災害などが多発しています。予期せぬ災害も含めて、あらゆる状況に対応するために、聖マリア病院は地域と連携する仕組みをより強固なものにしなければなりません。高度で専門的な治療や研究を目指す一方で、地域のための病院であり続けることへの使命を強く受け止めています。

九州がんセンター消化管外科 岩永彩子
IWANAGA Ayako
2003年入職(22年から九州がんセンター)

少しでも負担なく、癒される医療を

九州がんセンターでは、食道がんのダビンチ(内視鏡手術支援ロボット)手術を聖マリア病院でも行うという目的を持って取り組んでいます。これまでたくさんのがん患者さんに接してきた中で、少しでも患者さんが身体的に負担なく、精神的にも癒されるような医療を提供できるようにと考えています。専門とする開腹しない腹腔鏡手術も、患者さんの負担が少なく、回復も早いところに着目したからです。さらにダビンチ手術の資格を取り、技術向上を目指しているところです。
外から見た聖マリア病院は、24時間365日動いている救命救急センターと周産期からホスピスまでの包括的な医療が大きな特徴だと思います。患者さんにとって、受診のハードルが低く頼りやすい病院である一方、数多くの患者さんを受け入れることで、待ち時間が長くなることや受け入れできないこともあります。一人でも多くの患者さんが目的とする医療を受けることができ、医療者も働きやすい職場であるよう改善、改革の一助になることができればと考えています。

消化器内科、内視鏡センター長 上野恵里奈
UENO Erina
2004年入職

検査から診療、
治療のさらなる迅速化へ

患者さん側から見た聖マリア病院の魅力の一つは、スピーディーに検査ができることです。検査には意外と時間が掛かるものですが、ここでは24時間365日の救急体制があることで、夜間を含めて迅速な検査が可能だからです。業務の分担が進み、人も増え、患者さんへのサービスは確実に向上してきました。
一方で、医師や診療科が増えて大規模になったことで相互の連携が課題になってきたと感じています。スムーズな診断を実現するため、関係診療科を組織的に結び付けるセンター化は対策の一つ。来春完成の聖マリア研究センター内にできる医局は、他科の先生と顔を合わせて気軽に相談できるオープンスペース。診療科の垣根を越えた環境整備が、検査から診療、治療のさらなる迅速化につながると期待しています。 普及した健診制度でしっかり検査を受けてきた世代の患者さんが増え、いっそうの早期発見、早期治療が求められています。仲間と連携して応えていきたいと思います。

看護部 管理師長 上岡和代
UEOKA Kazuyo
1997年入職

地域を支え、地域に支えられ

聖マリア病院は、基本理念のもとに地域を支え、地域に支えられてきた病院です。そしてこれからもそうでありたいと思っています。保健師として「予防」に重きを置いて業務に当たってきましたので地域住民の健康を守りながら、病を抱えていても活力にあふれ、ともに協働して互いを支えあうことができるまちづくりなど、地域と共生していきたいと考えています。
当院には、救急医療から在宅ケアまで携わることができる環境があります。いずれの段階においても大切なことは相手に寄り添うということだと思っています。無意識のうちに自己満足の押し付けのケアになっていないかと迷い、悩んだときに道しるべとなってくれるのが、基本理念である「カトリックの愛の精神」だと思っています。真に寄り添うためには、相手が何を求めているのか、考えて想像して傾聴することが大切です。寄り添うことの大切さを日々かみしめています。

リハビリテーション室長 理学療法士 泉清徳
IZUMI Kiyonori
1993年入職

深く専門的に、広く地域へ

より医療の質が問われる時代となりました。リハビリテーション部門でも結果に基づいた治療や療法、訓練が求められ、その効果についてエビデンスを示していかねばなりません。建設中の聖マリア研究センターでは、さまざまな症例を基盤に臨床研究を行い、エビデンスを積み重ねていくことでしょう。ある意味、聖マリアブランドにつながっていくと期待をしています。
医療は今後、予防的な考えが強まっていくと見られます。それに伴ってリハビリテーションの活動はより多様化すると考えています。急性期の患者さんに対して専門的療法や治療に取り組む一方で、地域に出て予防的な活動をする可能性が広がるでしょう。既に、地域共生センターに人を出していますし、要請を受けて地域へ出掛けていくこともあります。よりよい活動の在り方を追求して、検証、研究を重ねていきたいです。

診療放射線室長 診療放射線技師 寺崎博之
TERASAKI Hiroyuki
1988年入職

患者さんのため対応できる
画像診断の技量向上を

診療の入り口として画像診断は年々重要になってきました。24時間体制の聖マリア病院では、CT撮影を月3千件以上、MRI撮影も千件程度対応しており、安全かつ正確な画像提供を心掛けています。
最近、医療機器の発展は著しく、今後の画像診断はディープラーニング(深層学習)というAI機能を搭載した装置が主流となっていくようです。診療放射線技師は、機器の進化に遅れをとることなく技量を向上させなければなりません。診療放射線室では三つのテーマを掲げました。それぞれの技師が数多くの検査部門で勤務ができる体制を確立し、技量の標準化とその目的達成のためのスキルマップを充実させ、応用、検証力アップのために積極的な学術発表を促進することです。全国規模での学会発表に臨む若手技師たちを後押しする補助、指導の仕組みも設けました。
患者さんの求めに柔軟に対応できるよう、視野を広げ、知識を蓄え、経験を積み重ねていきたいと思っています。

総務企画部長 立花秀之
TACHIBANA Hideyuki
1988年入職

将来の鍵を握る研究センター

当初は薬剤師として入職し、事務職に転じてから、救命救急センターや地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院など、拠点病院化に向けた県の指定取得などに取り組みました。病院の役割分担が進み、病院単独で完結させるのではなく、地域全体で患者さんを診る仕組みが出来上がりつつあります。
医療を取り巻く環境は常に変化します。高度医療については拠点化がより進むと見られます。当院には、24時間365日の救急医療をベースにして多種多様な症例実績が蓄積されており、臨床研究に生かされる貴重な財産となります。その意味で、現在建設が進められている聖マリア研究センターの存在が、当院の将来において大きな鍵を握ることになります。
また人口減少社会においては、高齢者とそれに伴う患者さんが減少に転じていく地域と、福岡市近郊のようにまだ増え続ける地域とに分かれていくでしょう。より広域的に、医療を支え合う視点も必要になります。

新生児集中ケア認定看護師 井上悠香里
INOUEA Yukari
2001年入職
(04年より2年間、沖縄の病院勤務)

地域に根差した病院であり続ける

若い頃に他院のNICU(新生児集中治療室)が見たくて、2年ほど沖縄の病院に勤めたことがあります。そこで初めて、聖マリア病院で当たり前に行われていた保育士や助産師との連携や家族会づくりが当たり前でなかったことに気付きました。今でこそ新生児ケアにおいてFCC(家族中心のケア)はスタンダードですが、当時、先んじてその環境をつくり上げていた聖マリア病院の先進性を誇りに思いました。
地域に根差した病院であり続けるために、積極的に地域に出て新生児蘇生法などを広めたいと思います。これは理想ですが、医療的ケアを必要とする子どもたちとその家族を退院後も支援できる施設を、聖マリア病院で造れたら素晴らしい思います。

薬剤部 がん薬物療法認定薬剤師 光安正平
MITSUYASU Shouhei
2014年入職

おごり高ぶることなく・・・

「私のつらさも知らないで、あれやこれやと指図しないで」。今でも覚えている患者さんからの激しい言葉です。私たち医療従事者は、患者さんのためを思ってさまざまな助言を行います。でも、もっと患者さんのつらさに寄り添って行動すべきでした。反省し、仕切り直しました。「困りごとやつらさを解決する方法を一緒に考えさせてほしい」と伝えました。患者さんから返ってきた一言は「そういう言葉が聞きたかったんだ」。
義人なし、一人だになし-「塩狩峠」という小説で知った聖書の一節があります。現場に通じる境地があります。どんなに専門性を高めていったとしても、この一節を胸に、おごり高ぶることなく患者さんに寄り添う薬剤師であり続けたいです。

臨床検査室 臨床検査技師 平川優太
HIRAKAWA Yuta
2014年入職

常に患者さんを意識しながら

私たち検査技師は直接患者さんと接する機会は少ないのですが、看護師らが患者さんやご家族に寄り添う姿をよく目にします。検体を取り扱う際は、そうした患者さんを常に意識するようにしています。24時間体制で「断らない医療」の一翼を担っていることは誇りで、検査の管理と検査結果の品質の国際規格である「ISO 15189」を2007年に取得したことは正しい検査結果を導いてきた証しだと思います。慣れない検査法に苦慮したコロナ禍も今後の糧になるでしょう。検査機器は日々進化し、生成AIの登場で著しい変化も予想されます。業務を分担し、他部署と協力し合う。人との関係を大切にしながら取り組んでいきたいです。

医療情報室係長 診療情報管理士 村上凌太
MURAKAMI Ryouta
2015年入職

情報を患者さんへフィードバック

「常に弱い人と共に歩むこと」とは。このような基本理念について考えるようになったのは、後進の指導に当たるようになってからでした。病院には医師や看護師のほかにも多岐にわたる事務員がいます。医療の進歩には、カルテ管理や診療情報の処理などを行う私たち事務スタッフの質向上も不可欠です。時代の変化に応じて病院の役割は進化します。医療情報のデータ化が進みます。抽出された情報は臨床研究に生かし、その成果は患者さんへフィードバックされなければなりません。改めて重要な仕事に携わっているのだと感じます。情報の有効な活用が医療全体や地域の皆さんの健康づくりへ少しでも役に立つ。それが私にとって「共に歩む」ことなのかもしれません。

日韓カトリック医療協会事務局
聖マリア研究センター研究員
金晟娥
KIM Sung-a
2011年入職

日韓の絆、より深めるために

釜山カトリック大学(韓国)の在学中に、姉妹校だった聖マリア学院大学とのインターンシップ交流で来日、3カ月間学び、病院施設の見学もしました。その縁で聖マリア病院での勤務が始まりました。以来日韓交流事務に携わりながら、個人的には大学院を終え、公衆衛生学の研究を続けています。
韓国と日本は政治的関係が悪化する時期でしたが、逆に韓国カトリック医療協会との交流は盛んになっていきました。交互に訪問して開く運営委員会では、政治状況を笑い飛ばすほど和やかで、互いの信頼感が肌で感じられました。通訳だけ頑張ればよいと思っていた私も、両国の一人一人を結び付けることが役割だと気付かされたのです。国の違いを超えたカトリックの絆をより深めるため、今後も尽力していきたいと思います。 

対外協力室 診療情報管理士 藤堂かつら
TODO Katsura
2002年入職

外国人への対応マインド、
病院全体のスタンダードに

「民間病院が国際協力をやるのは珍しいね」とよく言われます。10年ほど関わっていますが、過去の資料をまとめていると、例えば1994年、インドネシアのストモ病院救急医療プロジェクトでJICAへの協力として多くの職員が派遣されています。韓国やベトナムなどの医療機関とも協力体制を構築しています。これらは全て基本理念と運営方針の一つ「保健・医療を通じて国際社会に貢献する」というものの具現化だと理解しています。
また久留米市には、中国、ベトナム、ネパール、フィリピンなど多くの外国人が居住し、外国人患者の受け入れもますます増えると思います。今後、外国人患者さんへの対応マインドを病院全体のスタンダードにしていかなければならないと感じています。

チャプレン室 石橋ゆつき
ISHIBASHI Yutsuki
1991年入職

心細いとき、頼られる存在に

法人司祭によるミサや病院内外におけるカトリック行事などに携わるとともに、患者さんとそのご家族、そして職員の皆さんの心のケアのために活動しています。病院敷地内には雪の聖母聖堂があり、信者さんのみならず全ての人に開放しています。チャプレン室は通常の病院にとって不可欠な組織ではありませんが、その意味で、当院のアイデンティティと言えるかもしれません。医療と信仰は、命や生き方などで接する部分があります。病で心細くなったときに、司祭に頼ってほしいと思います。その流れを方向付けるのが私たちの役目だと思っています。「ほっとしたい」。そんな感じで聖堂に来られるのも大歓迎です。ぜひ神父様と話していただきたいと思います。