令和4年度 聖マリア病院 病院指標
年齢階級別退院患者数
ファイルをダウンロード年齢区分 | 0~ | 10~ | 20~ | 30~ | 40~ | 50~ | 60~ | 70~ | 80~ | 90~ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
患者数 | 1,870 | 637 | 554 | 808 | 977 | 1,392 | 2,192 | 3,357 | 2,690 | 778 |
2022年度は2020年度からの新型コロナ感染症の影響を受け、予定入院の制限を受けた影響がありました。2021年と比較して患者数はほぼ横ばいの状況になっています。年齢区分別の入院状況では70歳以上は45%でした。2020年度42%、2021年度44%で着実に増加しています。また、緊急入院患者でみると70歳以上の患者で5割をこえてしまいました。予定入院ではピークは70-79歳でしたが、緊急入院ではピークが80~89歳の所になっています。久留米市の総人口は301,781人で昨年よりも減少しています。65歳以上は27.7%を占め、人口の3.6人に一人が65歳以上、7.2人に一人が75歳以上になっています。80歳以上の高齢者は異常の発見がおくれ、重症化した時点で病院に救急で搬送されているのではないかと考えています。高齢者は一度入院されると在宅復帰が困難になるケースが多いと考えられています。このため、入院前のかかりつけ医の先生方に早めに異常を発見いただいてご紹介いただき早めの治療をおこなえるように連携を推進する必要があると考えられます。また、高齢者で救急病院の入院をしめてしまって、機能を果たせなくなることを防ぐためには、重症な状態を脱したところで次の病院に移ることができるように地域の医療機関との連携を十分に深めていく取り組みが重要であると考えています。
※予定入院と緊急入院の内訳はこちらをご参照ください。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
ファイルをダウンロード消化器内科
当院消化器内科では、消化管疾患に対するさまざまな内視鏡(カメラ)を用いた検査や治療のほとんどを行っています。2022年度は胃・大腸の腫瘍性病変をはじめとした消化管腫瘍性病変に対する内視鏡的治療を年間約500件行いました。中でも大腸ポリープ(主に腫瘍性ポリープ)に対して年間約400件の内視鏡下摘除を行いました。通常は3~4日程度の入院の上での治療を行っていますが病変が小さな場合には外来での日帰り治療も行っています。また2cm以上の大きな腫瘍性病変(主に粘膜内にとどまる早期大腸がん)に対しては、内視鏡的粘膜下層剥離術という手法を用いて治療を行うことが可能です。また、抗血栓薬という血液をサラサラにして固まらないようにするお薬を内服している患者さんにおいて、以前は出血の危険性を考慮し、抗血栓薬を休薬して治療を行っていました。しかし休薬する事で血栓症が発症する恐れもあるため、最近は薬の内容にもよりますが1cm程度までの腫瘍性ポリープ(がんを除く)であれば内服したまま切除を行う事も可能となりました。
また早期胃がん(主に粘膜内にとどまる早期胃がん)に対しても上述した内視鏡的粘膜下層剥離術の手法を用いて治療を行うことが可能です。ただしがんの種類や大きさなどによりその適応が異なるため、専門医との相談が必要です。
救急搬送される患者さんが多いことも当科の特徴です。その中でも胃・十二指腸潰瘍や大腸憩室などを原因とした消化管出血、胆石・胆のう炎、胆管結石に伴う胆管炎などの患者さんが多く搬送されます。ここでも内視鏡の果たす役割は大きく、消化管出血の患者さんに対する内視鏡的止血術や、胆管結石に伴う胆管炎や閉塞性黄疸の患者さんに対する内視鏡を用いた採石や胆管ドレナージ術などを行っています。
消化管出血の原因のひとつである胃・十二指腸潰瘍の患者さんはヘリコバクター・ピロリ菌に感染していることが多く、そのような場合には一度潰瘍が治癒しても再発することがあります。またヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんの発生に関与していることが明らかになっているため、胃・十二指腸潰瘍や胃がんの患者さんはヘリコバクター・ピロリ菌に感染していないかの検査を行うことが望まれます。検査方法には呼気試験という方法や血液検査、便の検査、また内視鏡の最中に胃の細胞をいただいて検査する方法があります。検査結果からピロリ菌に感染していることが判明した場合にはピロリ菌の除菌が望まれます。除菌するには2種類の抗菌薬と制酸剤、あわせて3種類の薬剤を1週間ほど内服する治療(1次除菌)が有効であり、1次除菌療法を行った方の約90%でヘリコバクター・ピロリ菌が除菌されます。無効であった10%の方にも薬剤の一部を変更した2次除菌療法を行うと、その90%の方でヘリコバクター・ピロリ菌が除菌されます。また一度除菌されると再感染することがほとんどないとも報告されています。
そのほか、救急搬送される患者には手術後の癒着による腸閉塞の方もいます。腸閉塞には緊急手術が必要な場合と保存的な治療を行う場合があります。保存的な治療ではイレウス管と呼ばれる細くて長い管を鼻から挿入し、腸管の減圧を行う方法や水溶性造影剤を腸管に注入して閉塞を解除する方法などがあり、順調に経過すると7~10日間ほどで退院が可能です。
以上、当院の主な治療について簡単に説明いたしました。このようなご病気に関してご心配な場合や質問があれば、当科を受診の上でご相談ください。かかりつけ医がいらっしゃる場合にはかかりつけ医と相談し、紹介状を持参の上で来院していただきますと円滑に受診していただくことができます。
血液内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
130030XX99X9XX | 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置2 9あり | 21 | 20.05 | 13.53 | 0 | 70.76 | |
130030XX99X5XX | 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置2 5あり | 18 | 21.94 | 19.67 | 5.56 | 67.06 | |
130010XX97X9XX | 急性白血病 手術あり 処置2 9あり | 16 | 45.56 | 36.2 | 0 | 71.44 | |
130030XX97X50X | 非ホジキンリンパ腫 手術あり 処置2 5あり 定義副傷病なし | 15 | 22.53 | 30.75 | 6.67 | 66.07 | |
130030XX99X4XX | 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置2 4あり | 15 | 14.2 | 10 | 6.67 | 60.8 |
血液疾患において高齢化の傾向はさらに進んでいます。よって治療は、患者さんの病状や社会的な背景を評価して包括的な診療を行います。診断時より緩和ケアを積極的に取り入れ、難治性の患者さんにおいてもアドバンスケアプランニング(ACP:今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)を行いながら最期まで患者さんとそのご家族を支援する方針をとっています。
血液腫瘍においては細胞遺伝学的診断、遺伝子診断を用いたリスク評価を行い、リスクに応じた治療戦略をたてることによりより効果的で安全性の高い治療を選択しています。
「急性骨髄性白血病」に対しては、多剤併用化学療法や分子標的薬を用いた治療を行い、高リスク症例や再発難治症例においては、適応年齢、全身状態を評価して積極的に同種造血幹細胞移植を行っています。
「急性リンパ性白血病」に対しては、微少残存病変の有無による治療方針の選択を行っています。また新薬である抗体療法も積極的に取り入れております。また染色体、遺伝子解析により、層別化を行い必要な症例に同種造血幹細胞移植を行っています。
「悪性リンパ腫」においては、低悪性度リンパ腫に対する新規抗体医薬品やT細胞性リンパ腫に対する新規低分子医薬品を積極的に導入し治療をしています。
難治性びまん性大細胞B細胞リンパ腫に対しては実施可能施設と提携して最新治療であるCAR-T療法を検討しております
「多発性骨髄腫」症例は高齢者が多いですが、65歳以下の可能な症例においては新規薬剤による治療導入後に積極的に自家末梢血幹細胞移植を行います。また、65歳以上の移植不適応な症例には分子標的薬を用いた多剤併用療法で長期寛解を目指した治療を行っています。また、難治性びまん性大細胞B細胞リンパ腫と同様に実施可能施設と提携して最新治療であるCAR-T療法を検討しております。
「高リスク骨髄異形成症候群」においては、適応のある症例には積極的に同種造血細胞を行い、非移植適応患者に対してはアザシチジンを中心とした化学療法を行っています。「低リスク骨髄異形成症候群」に対しては免疫抑制療法うあエリスロポエチン受容体刺激剤、輸血による支持療法、鉄キレート療法を行っています。
「同種造血細胞移植」は難治性血液疾患においては唯一治癒の可能性をもたらす治療です。当施設は日本造血細胞移植学会においてカテゴリー2の認定を受けており、あらゆる同種造血細胞移植に対応できる体制を整備しています。
呼吸器内科
呼吸器内科は肺疾患に対する診療科です。当科への入院患者数では誤嚥性肺炎、肺がん、間質性肺炎などが上位を占めております。肺がんに対しては化学療法・免疫療法や放射線治療、検査入院、緩和治療が内訳となります。肺がん治療ガイドラインに従い治療方針をカンファレンスで決定しています。間質性肺炎は病原菌の感染以外のさまざまな理由で肺に炎症が起こり、さらに線維化していく病気で、まずは原因精査を行います。原因によって抗線維化薬やステロイドなどの抗炎症治療、免疫抑制治療などを使い分けて治療しております。
脳血管内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
010060X2990401 | 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内,かつ,JCS10未満) 手術なし 処置1なし 処置2 4あり 定義副傷病なし 発症前Rankin Scale 0,1又は2 | 146 | 19.14 | 15.97 | 39.73 | 68.14 | |
010230XX99X00X | てんかん 手術なし 処置2なし 定義副傷病なし | 71 | 8.59 | 7.33 | 7.04 | 57.93 | |
010060X2990201 | 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内,かつ,JCS10未満) 手術なし 処置1なし 処置2 2あり 定義副傷病なし 発症前Rankin Scale 0,1又は2 | 45 | 18.02 | 16.01 | 35.56 | 70.13 | |
010060X0990201 | 脳梗塞(脳卒中発症4日目以降又は無症候性,かつ,JCS10未満) 手術なし 処置1なし 処置2 2あり 定義副傷病なし 発症前Rankin Scale 0,1又は2 | 41 | 18.95 | 16.18 | 36.59 | 71.34 | |
030400XX99XXXX | 前庭機能障害 手術なし | 34 | 5.15 | 4.79 | 0 | 68.94 |
当科で扱う疾患で最も多いのは脳梗塞で、年間500~600例の脳梗塞患者さんの治療を行い、福岡県南地域の一次脳卒中センターコア施設の役割を担っています。脳梗塞の超急性期の治療としては血栓溶解薬点滴静注療法と、頭頸部の主幹動脈が閉塞している場合には緊急再灌流療法(カテーテル治療)を行い、一人でも多くの患者さんが社会復帰を果たすことができるよう、日々努めております。
てんかんに関しましては、遺伝する病気との認識がありますが、家族歴がない患者さんも多いです。急速な高齢化の進行に伴って「高齢者てんかん」が増加傾向にあります。若年の方の場合、発作後に後遺症を残す危険は低いですが、高齢者の方の中にはADLが顕著に低下してしまう方もおり、発作予防が重要です。
めまい症は良性の耳鼻科疾患(前庭機能障害)がその多くを占めますが、一部に脳梗塞や脳出血などの脳卒中や、脳動脈解離などが原因のものが含まれるため、それらの疾患を見逃さぬよう頭部画像検査を行い、慎重な診断と治療を心がけております。当科ではあらゆる脳神経救急疾患に対して、迅速に対応できる診療体制を整えています。
循環器内科
循環器内科における診療の大きな柱は、虚血性心疾患への対応です。急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群に対しては、緊急の対応が必要ですので、24時間365日循環器内科の医師が院内で勤務をして、迅速に対応できるようにしています。
慢性虚血性心疾患においては、平均年齢は70歳弱で、平均在院日数は検査のみで4日未満、治療(経皮的冠動脈形成術)を行った場合も5日程度となっています。適応を十分に考慮し、できるだけ短期間で退院できるようにしています。治療適応の判断にあたっては、従来からの負荷心電図や負荷心筋アイソトープ検査に加え、冠動脈造影に引き続き圧センサー付きワイヤーで冠血流予備量比(FFR)を測定することで、機能的な虚血が証明された例において、手技的なリスクも考慮した上で適応を決定しています。近年では心臓CT画像を元に、狭窄が血流に与える影響を流体力学解析を行い評価するFFR-CTも併用することで、治療適応をより厳密に評価しています。冠動脈形成術の場合も、事前に適応や治療方針など十分な検討を行い、無駄な治療を行わないなどを徹底しながらできるだけ短期間の入院となるようにしています。
近年では不整脈に対するカテーテルアブレーション治療も、診療の柱となっています。治療技術の進歩により、徐々に適応は拡大しており、対象患者さんの平均年齢も少し上がってきています。平均在院日数は5日未満で、症例数が増加していますが、クライオアブレーション、レーザーバルーンを導入するなどして1日あたりの治療件数を増加させ、外来での予約から入院までの日数が長くならないようにしています。
心不全パンデミックと呼ばれる全国的な心不全患者の増加に伴い、当院においても多くの心不全患者が入院しています。平均年齢は83歳を超え、高齢化が顕著となっております。迅速な心不全コントロールによる在院日数の短縮、適切な原因精査と十分な治療による再入院の予防に努めています。ただし、積極的な精査加療を望まれない患者も増えており、アドバンスケアプランニング、緩和医療も実践しています。また久留米大学、新古賀病院や地域の先生方と協力し心不全の診療がスムーズに行くような取り組みも始めています。 また、適切な入院適応判断や早期からのソーシャルワーカーの介入、かかりつけ医、往診医との連携により、転院率も低く抑えるように努力していますが、合併疾患等のため退院が困難で転院せざるを得ない例も散見され、転院率は20%程度となっております。
小児科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
150040XXXXX0XX | 熱性けいれん 処置2なし | 102 | 4.68 | 3.64 | 0 | 2.02 | |
040100XXXXX00X | 喘息 処置2なし 定義副傷病なし | 83 | 6.28 | 6.05 | 2.41 | 3.47 | |
040090XXXXXXXX | 急性気管支炎,急性細気管支炎,下気道感染症(その他) | 82 | 6.28 | 5.89 | 0 | 0.54 | |
110310XX99XXXX | 腎臓又は尿路の感染症 手術なし | 66 | 8.89 | 13.61 | 3.03 | 2.3 | |
080270XXXX1XXX | 食物アレルギー 処置1あり | 57 | 2.07 | 2.09 | 0 | 4.3 |
2022年は前年と同様に新型コロナウイルス感染拡大(第6、7、8波)に伴い、紹介患者数と入院患者数は例年より減少した状態です。現在も新型コロナウイルス小児患者の入院を受け入れながら、24時間365日、小児救急疾患に対応しております。ただし小児の救急車搬入件数は年間1,768件(1日4.8件)で2021年度より521件増加しています。入院患児の特徴は救急車搬入される緊急性の高い疾患、特にけいれん重積発作(複雑型熱性けいれん、てんかん発作、脳炎脳症など)の対応を行っており、新型コロナウイルス感染を伴う有熱時けいれんが当院に救急搬送されています。いかなる時間帯においても検査(ビデオ脳波、頭部CT、MRI・MRAなど)を行い、迅速な診断と適切な初期対応治療に努めています。また、新型コロナウイルス感染以外の酸素・点滴管理が必要となった呼吸器感染症・アレルギー疾患(急性気管支肺炎、細気管支炎上気道炎:新生児・乳児発熱、気管支喘息発作など)が熱性けいれんの次に多く入院加療を行っています。診療ガイドラインが推奨する新規経口抗菌薬や吸入ステロイド薬が一般外来診療にて浸透している現状でも、点滴加療の必要な中等症以上が入院加療を行っています。また近隣の医療機関から紹介される乳児発熱の原因疾患として、尿路感染症を認めています。原因菌である大腸菌の耐性化:ESBL産生大腸菌などが検出され入院期間が1週間以上となる傾向があります。 個々のケースで感受性に応じた薬剤の選択加療を行っています。食物アレルギーに関しては、アナフィラキシーによる救急車搬入、原因食品の同定・可能な摂取量の決定などを目的として食物経口負荷試験の入院にて精査加療を実施しており増加傾向を認めます。
小児循環器内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
14029XXX97X0XX | 動脈管開存症,心房中隔欠損症 その他の手術あり 処置2なし | 35 | 5.94 | 5.68 | 0 | 12.03 | |
14031XX09910XX | 先天性心疾患(動脈管開存症,心房中隔欠損症を除く)(1歳以上) 手術なし 処置1あり 処置2なし | 28 | 4.04 | 4.18 | 0 | 15.21 | |
14029XXX9900XX | 動脈管開存症,心房中隔欠損症 手術なし 処置1なし 処置2なし | 23 | 2 | 4.74 | 0 | 11.91 | |
14031XX19910XX | 先天性心疾患(動脈管開存症,心房中隔欠損症を除く)(1歳未満) 手術なし 処置1あり 処置2なし | 10 | 4 | 4.41 | 0 | 0 | |
14029XXX9910XX | 動脈管開存症,心房中隔欠損症 手術なし 処置1あり 処置2なし | - | - | 4.02 | - | - |
現在の日本は未曽有の少産多死社会となり、2023年の統計では約70~80万人の人口減少となっています。言い換えると久留米市(人口30万人)が2.5個無くなっている計算になっています。国や地方自治体が色々な対策を講じていますが、今後子どもが急激に増える要素が見当たらず、この傾向は今後変わることはないと思われます。2023年4月1日時点で日本の子どもの数(15歳未満)は1,435万人で前年度より30万人減少し、総人口に占める割合は11.5%となり、42年連続で減少しているのが現状です。対して久留米市では子どもの数(15歳未満)は44,098人(前年より872人減)で人口に占める割合は14.6%、と国の平均よりやや高くなっています。また年間の出生数は約2,200人で、合計特殊出生率は全国の中では高い位置にあります。
これは久留米市周辺が、教育環境、生活環境が整い、いつでも受診できる当院のような病院があることも寄与していると思います。周辺の市町村まで合わせると約4,000人前後が出生していると推定されます。一方、出生時に何らかの心臓の問題を抱えている新生児は約1%で、これらから久留米周辺で生まれつき心臓に問題がある子どもたち(先天性心疾患)は毎年40人から50人ずつ増加していると仮定できます。
先天性心疾患は沢山の種類と疾患の組み合わせがあるため非常に複雑なのですが、統計上は心室中隔欠損症、肺動脈弁狭窄症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症、動脈管開存症の5種類の頻度が高く、全体の約85%を占め、当院でも同様の状況です。当科ではそれ以外の生まれた後にかかってしまう川崎病後心後遺症、不整脈、心筋疾患の患児、患者さんも診療しています。
現在、小児循環器内科と標榜はしていますが、受診される方は生後0日から86歳までと幅が広いのも特徴です。理由として、当院は約40年前(1980年)から先天性心臓病の手術を行っているため、成人になった先天性心臓病の方たちのフォローアップなどをおこなっていることや、カテーテルなどでの治療技術が進歩したことにより成人で発見された先天性心疾患の方々を九州一円より紹介していただいているためです。
当科の外来受診者数は週2回の通常外来で年間3,000人前後と増加し、成人先天性心疾患の患者さんも多くなってきたため、循環器内科の先生方と協力し成人先天性心疾患外来を開設しています。また春、夏、冬の長期休みには特別外来、土曜日に長期フォローアップの方々のための外来を作って対応しています。
2022年に成人先天性心疾患専門医を取得し、2023年に成人先天性心疾患学会連携修練施設として認定されました。現在日本には15歳以下の患者さんが約15万人、15歳以上の方が57万人前後で合わせて約72万人位の患者さんが存在していると考えられており、今後も増加していくことは間違いありません。また最近の海外の報告では今までの日本では定期受診も終了として通院の必要なしと考えられていた心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症の術後遠隔期に一定数、心不全や肺高血圧症を合併するという報告が出てきています。こういった方々は3~5年に一度の受診を勧めて早期に対応していくことが今後、必要になってくると考えます。こういった方々の診療に加え、就学、進学、就労、結婚、妊娠、出産などのライフイベントの相談などを通じて、よりよい医療を提供できるものと考えます。仕事や遠方のためなかなか受診できない方、開業の先生方で治療方針を悩むような方々の受け皿となる外来ですので、多くの先生方からのご紹介をお待ちしています。
新生児科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
140010X199X0XX | 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 処置2なし | 85 | 8.54 | 6.13 | 0 | 0 | |
140010X199X1XX | 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 処置2 1あり | 33 | 10.06 | 10.26 | 9.09 | 0 | |
140010X299X0XX | 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(1500g以上2500g未満) 手術なし 処置2なし | 24 | 16.83 | 10.92 | 4.17 | 0 | |
140010X199X3XX | 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 処置2 3あり | - | - | 16.1 | - | - | |
140010X197X1XX | 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術あり 処置2 1あり | - | - | 11.78 | - | - |
当院の総合周産期母子医療センターでは、筑後地区・有明医療圏・大分県日田地区・佐賀鳥栖地区を中心に、幅広い医療圏の院外出生児に医療的問題が発生した際に迎え搬送を行うことで対応し、全入院の4割程度を占めています。また高度周産期医療施設である当院産科で、ハイリスク母体から出生した早産低出生体重児などに対応しています。そのため、出生体重が1,500g以上2,500g未満の早産低出生体重児、あるいは2,500g以上の院外出生児を多く入院管理しています。これらの児は、呼吸障害の頻度が高く、人工呼吸器管理を多数行っています。また2022年度は母体COVID-19感染母体から出生した児やその他の新生児期の感染症の児を多く管理しました。
外科
当院は、福岡県南部の救急医療の要となる『救命救急センター』であり、かつ『地域がん診療連携拠点病院』です。その中で外科は、救急医療、がん診療、移植医療まで広範囲にわたり診療を行っています。2022年度から上部消化管、下部消化管、肝胆膵・移植の診療科を設置して、より質の高い医療を提供できるようにチーム医療を行っています。
<診療実績>2022年度は、春、夏の新型コロナ感染拡大の影響を受けて病床が減少しましたが、救急医療を継続できるように、ヘルニア、胆石などの不急の良性疾患の手術は延期し、緊急を要する急患手術、及び進行がんに対するがん手術は従来通り対応できる体制としました。その結果、手術件数は923件 (全身麻酔+局所麻酔)、手術の66%は定例手術(がん手術を中心に)、34%は緊急手術で、定例手術、及び緊急手術の件数は若干減少しました。腹部救急疾患に対応する緊急手術は318件で、主な疾患は、上部・下部消化管穿孔、イレウス、虫垂炎、胆嚢炎、ヘルニア嵌頓などで、その中で腹腔鏡手術は34%を占めます。2022年のがん手術件数は、胃がん、肝胆膵領域がんは横ばい、結腸直腸がん、乳がんは若干減少しました。胃がんでは低侵襲な腹腔鏡手術が83%を占め、2018年からは、患者の負担がより少ないロボット支援下胃切除を導入し、2023年3月までに163件施行しています。大腸がんでは腹腔鏡手術が84%を占め、2019年から直腸がん手術に対してロボット支援下手術を導入し、2023年3月までに直腸がんに対して44件、結腸がんに対して7件のロボット支援下手術を施行しています。肝胆膵外科領域では、腹腔鏡下あるいは開腹での肝切除、膵頭十二指腸切除等を積極的に行い、血管合併切除を含めた高難度手術にも取り組んでいます。2017年に肝胆膵外科高度技能修練施設Bに認定され、2022年は肝胆膵高度技能手術 30件を実施しています。高齢化社会に伴い高齢者がん手術が増加しています。高齢者がん患者は、術前に身体機能、栄養状態、こころの状態などサルコペニア、フレイルを評価し、NST、理学療法士、栄養士と連携して、周術期のリハビリテーション、栄養指導を行って参ります。
乳腺外科
当院は、地域がん診療連携拠点病院として乳がん治療に対し専門的なスタッフをそろえ、診断、手術(乳房再建含む)、薬物治療、放射線治療、リンパ浮腫治療など乳がん治療に必要なすべての治療行うことができます。乳がん治療を一貫して行える当院では、再発患者さんが紹介されることも多く、化学療法はより安全に安定して行えるように静脈ポート(持続注入用植込型カテーテル)を留置しています。
進行した乳がん患者さんには、緩和ケアチームの医師・看護師、精神科の医師などとともに診療にあたり、患者さんの苦痛を取り除けるように心がけています。
移植外科
移植外科では「筑後地区に移植医療を根ざす」ことを目的に2015年9月より外来診療を開始しました。近隣の各透析施設からご紹介いただき、2022年6月現在、58例の生体腎移植を行いました。2018年11月からは献腎移植登録も開始し、現在までに60人の登録を行っています。
小児外科
鼠径ヘルニアと停留精巣は、小児外科の定例手術の約半数を占める疾患です。例年通り200例以上の手術が行われており、在院日数も短期間です。
救急疾患である虫垂炎は、患者さんやご家族の希望も考慮して、手術療法と保存的治療のいずれかを選択します。手術療法での在院期間は虫垂周囲膿瘍を伴う症例で数日ですが長くなることがあります。また、保存的治療では必然的に虫垂周囲膿瘍がある患者さんの在院期間は長くなりますので、全体的な結果として在院日数の差が認められます。
その他、先天性食道閉鎖症、直腸肛門奇形、ヒルシュスプルング病、先天性胆道拡張症、胆道閉鎖症などに代表される小児外科独特の疾患の治療も広範に行っています。積極的に鏡視下手術を導入することで可能な限りの侵襲低減に努めています。
形成外科
救急疾患に関しては原則断らない方針としており(ただし緊急手術中は除きます)、顔面外傷や熱傷患者が多くなっています。特に小児熱傷に関しては虐待の可能性も否定できないため原則入院をお願いしている都合上、手術不要な熱傷患者が増えております。上記以外にも、切断指や重度四肢外傷も手術治療を行なっています。近年糖尿病や閉塞性動脈疾患、慢性透析に起因する難治性足潰瘍が増えており、感染から緊急手術を要する患者さんも増えています。また、当科は開設当初から先天性疾患を多く治療しており、口唇口蓋裂に関しては口唇口蓋裂センターを通じて、院内の他職種と連携したチーム医療を実践しています。そのほか入院が必要な小児や高齢者の皮膚腫瘍の治療を行っています。ここ数年はリンパ浮腫治療に力を入れており、外来でのマッサージや圧迫療法、入院によるリハビリテーションや手術治療も積極的に行っています。
整形外科
大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折、橈骨遠位端骨折は高齢者の3大骨折です。
大腿骨近位部骨折は入院して手術を行う必要があります。早めに手術をして歩行訓練などのリハビリを行います。二次骨折予防のために骨粗鬆症の治療も並行して行います。
脊椎圧迫骨折は、変形しないように3カ月間のコルセット装着を行います。通常はコルセットで治療しますが、破壊(骨の損傷)が高度な場合や麻痺のある場合には、手術治療を行うこともあります。BKP(経皮的椎体形成術)は低侵襲で即時除痛効果に優れた治療法ですので高齢者に特に有効です。
当院は小児の骨折(肘、前腕など)も多く来院されます。通常はギプス固定などの治療を行いますが、転位(骨のズレ)が大きい場合は手術を行います。小児骨折は、骨癒合しやすい変形が成長とともに改善する自家矯正などの特徴があります。しかし、成長障害を起こすこともあるので骨癒合した後も定期的に経過観察します。
脆弱性骨盤輪骨折は通常は保存治療を行いますが、転位が高度な場合や疼痛が改善しない場合にはTITS(経皮的な仙腸関節固定術)を行います。
橈骨遠位端骨折(前腕手首側の骨折)はギプス固定による治療を行いますが、転位が大きい場合や関節内骨折は手術治療をおすすめします。
呼吸器外科
地域住民の健康管理を行っており、腫瘍性疾患だけではなく、気腫・嚢胞性肺疾患も対象に治療を行っております。近年は肺がんが増えているので、それを反映しております。また消化器がんの治療成績が改善されていくなかで、転移性肺腫瘍も増えてきました。高齢化に伴い、肺炎・膿胸の患者が少なくありませんが、最も治療期間が短くなるように治療方針を決定しております。
脳神経外科
当脳神経外科の役割は、「筑後地域において24時間365日、赤ちゃんから高齢者まで、いつでも迅速に、専門的な診療・手術ができる」というものと考えています。
当院では年間10,000件を超える救急搬入があり、年々増加しています。脳神経外科としても救急疾患がメインとなっています。特に頭部外傷と脳卒中が多く、中でもくも膜下出血が多く、合計で年間50から60件前後の搬入件数があります。
脳神経外科と脳血管内科が中心となる脳神経センターでは、小児分野に於いても小児神経外科認定医が3名在籍など体制整備が進み、より充実した人員のもとで数多くの疾患に対応しています。
〇日本脳神経外科学会 専門医:8人(うち指導医5人)
〇日本脳神経血管内治療学会 専門医:4人 指導医:1人
〇日本脳卒中学会 専門医:4人
〇日本神経内視鏡学会 技術認定医:2人
〇日本小児神経外科学会 認定医:3人
〇日本内分泌学会 内分泌代謝科(脳神経外科)専門医:1人
2019年度から、新たに専門外来として「赤ちゃんの頭の形外来」を開設しました。「寝ぐせ」によると言われている、いわゆる絶壁頭(変形性短頭症)や斜めに歪んだ後頭部(変形性斜頭症)の赤ちゃんだけでなく、病的な症候群性頭蓋縫合癒合症(クルーゾン病やアペール症候群など)をも対象としたものであります。寝ぐせによる多くの軽症例では体位指導やマッサージなどで改善していきますが、重症例では専用のヘルメットを装着することで整った形状に誘導するヘルメット療法が有効です。また症候群性のものに対しては内視鏡的に縫合切除などが有効です。
糖尿病内分泌内科
当科は糖尿病教育入院を入院診療のメインにしています。教育入院の期間は1週間で、年23回のスケジュールを設けていますが、新型コロナの影響で中止になった時期もありました。参加者は2型糖尿病が多数ですが、1型糖尿病病や妊娠糖尿病もおられます。また、妊娠糖尿病の血糖コントロールも担当しており、1型糖尿病合併妊娠の場合はCSIIやSAPといったインスリンポンプ療法を行っています。
緊急入院としては、高血糖緊急症(糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態)や低血糖症の治療も担当しています。高血糖は治療中断が原因になることが多く、低血糖の大半は高齢者です。最近では、高齢者の尿路感染症や誤嚥性肺炎などによる入院も増えてきています。
心臓血管外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
050163XX02X1XX | 非破裂性大動脈瘤,腸骨動脈瘤 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む) 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの)等 処置2 1あり | 17 | 17.35 | 19.15 | 11.76 | 73.82 | |
050163XX03X0XX | 非破裂性大動脈瘤,腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 処置2なし | 13 | 11.54 | 10.62 | 0 | 77.38 | |
050050XX0101XX | 狭心症,慢性虚血性心疾患 心室瘤切除術(梗塞切除を含む) 単独のもの等 処置1なし 処置2 1あり | 12 | 22.67 | 21.24 | 58.33 | 71.33 | |
050180XX02XXXX | 静脈・リンパ管疾患 下肢静脈瘤手術等 | 12 | 2.33 | 2.66 | 0 | 63.75 | |
050161XX97X1XX | 大動脈解離 その他の手術あり 処置2 1あり | - | - | 28.45 | - | - |
当科が対象とする疾患はおもに成人後天性心疾患:心臓弁膜症、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、大動脈疾患(大動脈瘤、急性・慢性大動脈解離)、末梢血管疾患です。弁膜症では大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症が増加傾向です。病因・病変などを検討して僧帽弁疾患に対しては可及的に弁形成術を行い、新たな取り組みとしては2022年3月から右小開胸(Minimally Invasive Cardiac Surgery:MICS)僧帽弁手術を開始しています。大動脈弁疾患に対しては主に人工弁置換術を行っていますが、基部拡大例では大動脈基部置換術(自己弁温存または人工弁)を行っています。急性大動脈解離、胸部大動脈瘤破裂は突然の胸背部痛にて発症し、タイミングを逸すると死に至る病気です。当院の救命救急センターや近隣の救急病院と連携・提携してより多くの患者さんを救命できるように努めています。腹部大動脈瘤に対しては解剖学的適応があればステントグラフト留置術を、解剖学的適応に合致しない場合は開腹人工血管置換手術を行っています。末梢動脈の閉塞性疾患に対する血行再建療法としては、カテーテルでのステント内挿術、バイパス手術があります。病変部位や開存性などを考慮して術式を選択しています。これら血管造影を用いた手技の場合は全例専用のハイブリッド手術室で手技を行っています。
精神科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
161070XXXXX00X | 薬物中毒(その他の中毒) 処置2なし 定義副傷病なし | - | - | 3.61 | - | - | |
170040XXXXXXXX | 気分[感情]障害 | - | - | 16.86 | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - |
総合病院精神科の役割として、精神科疾患患者の身体合併症の治療に重点を置き、骨折などの外傷や消化器疾患など身体的加療が必要な症例を周辺の施設から多数受け入れています。当院の精神科病棟は閉鎖病棟のみですが、身体科と連携して、一般病棟では対応困難な精神疾患患者の骨折などの外傷やがんなどの外科疾患、イレウス、代謝異常などの内科疾患の診療に対応しています。近年は必要な場合には緩和ケア的な加療も行っています。
また、2012年から多職種で構成される精神科リエゾンチームによる活動を開始し、一般身体科病床に入院した精神疾患の患者、せん妄・認知症などに対応しています。2022年度は新規の精神科リエゾンチームへの依頼数が約1300件にのぼり、チーム回診を毎日実施し(年間のべ4300件の往診)、多様なニーズに対応しています。
当院の特徴である救急医療分野では、救命救急センターに搬送された自殺未遂患者や混乱状態の患者にも精神科リエゾンチームで介入しています。毎年約110人前後の自殺未遂者の治療に救急科と連携してあたっており、必要に応じて精神科身体合併症看護認定看護師、社会福祉士(精神保健福祉士)、心理士などが環境調整や生活上の問題などの相談を受け、精神科的治療継続の促進や再企図の防止に取り組んでいます。また、刃物などでの自傷や墜落外傷の患者には、安全性の高い閉鎖病棟に入院のうえ、身体的・精神科的加療、及び身体的なリハビリテーションに取り組んでいます。
外来でも一般的な精神疾患の治療の他、身体科との連携が必要な精神科患者の治療を積極的に行っています。特に周産期の患者、特定妊婦には産科や公的機関と連携して対応し、適応障害や不登校といった思春期の相談では、必要に応じて臨床心理士と連携して、近年増加しているニーズに対応しています。
産婦人科
産科では、保険診療と自費診療併用の患者さんが多く、一般的な分娩は、DPC上の集計対象外となることにご留意ください。
産科は総合周産期母子医療センターを担っているため、近隣の産婦人科医院よりハイリスク症例の外来紹介や母体搬送を多く受け入れています。切迫早産、早産期の前期破水、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病が主要な疾患です。双胎妊娠、胎児発育不全、精神疾患合併妊娠や高年妊娠、更には特定妊婦なども他職種と連携して診療しているのが当科の特徴です。DPCにもその特徴が反映されています。
婦人科では、各疾患に対応したクリニカルパスを使用して、質の高い医療を効率的に提供しています。手術は子宮・卵巣の良性腫瘍に対する開腹手術の多くが腹腔鏡手術へ移行し、徐々に症例数も増加してきています。悪性腫瘍は日本婦人科腫瘍学会の専門医を中心に手術(開腹、腹腔鏡)、化学療法、放射線療法、ほか緩和医療まで集学的な診療を行っています。腹腔鏡手術などの低侵襲手術も積極的に行っています。近年、若年者や高齢者の患者さんも増加してきており、個々の症例に応じて、女性のライフプランも考慮した治療を積極的に行っています。
眼科
網膜剥離は、治療が遅れると視力障害を残したり、失明する可能性のある疾患です。当科ではできるだけ早急に手術を行うことを心がけ、良好な手術成績を残しています。また黄斑前膜、黄斑円孔、糖尿病網膜症などの網膜疾患に対する硝子体手術に特に力を入れています。また緑内障手術にも力を入れており、流出路再建術、濾過手術だけでなく、チューブシャント手術もできる体制です。2019年6月からは水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術(iStent手術)も開始しています。2020年12月からiStent inject Wを導入しました。2個打ちのためさらなる眼圧下降効果が期待されます。最新の手術用顕微鏡、広角眼底観察システム、硝子体手術装置を2台ずつ導入し、安全かつ低侵襲の手術を目指しています。
耳鼻いんこう科
当科での主な手術は、慢性扁桃炎、扁桃肥大・アデノイド増殖症に対する扁桃摘出やアデノイド切除術、また副鼻腔疾患に対する内視鏡下手術です。慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎や外リンパ瘻による耳性めまい・難聴に対する顕微鏡・内視鏡下手術も行います。当院は高気圧酸素療法の施設を有しており、突発性難聴の患者さんを多数ご紹介いただいております。最近は悪性リンパ腫の確定診断目的に頸部リンパ節生検を行う症例が増えております。
皮膚科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
080010XXXX0XXX | 膿皮症 処置1なし | 27 | 13.63 | 13.5 | 7.41 | 67.3 | |
080020XXXXXXXX | 帯状疱疹 | 20 | 10.95 | 9.25 | 5 | 70.6 | |
080100XXXX0X0X | 薬疹,中毒疹 処置1なし 定義副傷病なし | - | - | 10.74 | - | - | |
080110XXXXX0XX | 水疱症 処置2なし | - | - | 28.56 | - | - | |
080090XXXXXXXX | 紅斑症 | - | - | 10.58 | - | - |
当院皮膚科の入院患者は手術や悪性腫瘍での入院は行っておらず、感染症が大部分を占めています。ウイルス感染症の帯状疱疹と細菌感染症の蜂窩織炎・丹毒が主体となっています。どちらも高齢患者が比較的多いため、平均年齢が高く、改善が悪いため入院期間が延長し、直接退院できない場合は、近隣の病院へ転院になることも多々あります。感染症以外では、薬疹を含めた中毒疹および自己免疫性水疱症があります。近年では自己免疫性水疱症が増加している傾向があります。
泌尿器科
2022年度、当科において入院患者数が最も多かったのは、例年通り前立腺がん疑いで前立腺生検のため入院する患者さんです。経直腸的前立腺生検を一泊二日で行っています。前立腺がん患者さんは年々増加しており、可能な限り早期発見に努めています。
次に多いのが膀胱がんです。多くは表在性膀胱がんであり、それらに対し経尿道的切除を行っております。膀胱がんは膀胱内再発の多いがんであり、再発予防のため外来にて膀胱内に薬剤を入れる膀胱内注入療法などを行ったりし、できるだけ膀胱を温存できるようにしています。また、浸潤性膀胱がんや転移性膀胱がんに対しては抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害剤による治療も行っております。
次に多いのが上部尿路結石症で経尿道的結石除去術を受ける患者さんです。当院では体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経皮的尿路結石除去術(PNL)も行っており、症例により適切な治療法を選択しています。それに続くのが 尿路感染症です。当院は救急病院であり、尿管結石などによる閉塞性腎盂腎炎からの敗血症のような重症感染症も多く、できるだけ早く尿管ステント留置や腎瘻造設を行い閉塞解除するようにしています。
腎臓内科
腎疾患に関しては、検尿異常・腎生検・腎炎の治療まで行います。たとえばIgA腎症では腎生検後診断および重症度を判定して適応があれば、耳鼻いんこう科に依頼し、扁桃摘出を検討していただき、さらに当科でステロイドパルス療法を行っています。腎不全に関しては積極的に腎不全の進展予防に努め教育入院なども行っていますが末期腎不全に至った場合はアクセスを作成し、血液透析・腹膜透析を導入します。2015年からは院内で生体腎移植が可能となり2018年11月からは献腎移植の登録も当院で可能となりました。電解質異常はナトリウム、カリウム、カルシウムの異常が多く、精査を行い治療に当たります。
透析内科
透析内科では主に維持透析の管理を行っております。透析患者さんの合併症のうち特に特別な処置の必要のない方やアクセス関連の加療に関しては当科で受け持ちます。血液透析ではバスキュラーアクセスの不全が多く、血管内操作によるPTAや再作成により再建を行っております。また、透析患者の感染症も通常は受け持ちます。腹膜透析の場合、腹膜アクセス関連の入院がもっとも多く腹膜炎や出口部感染の加療を行います。
救急科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
161070XXXXX00X | 薬物中毒(その他の中毒) 処置2なし 定義副傷病なし | 71 | 5.48 | 3.61 | 11.27 | 47.44 | |
030400XX99XXXX | 前庭機能障害 手術なし | 70 | 6.11 | 4.79 | 2.86 | 67.41 | |
040081XX99X0XX | 誤嚥性肺炎 手術なし 処置2なし | 51 | 15.88 | 21.11 | 60.78 | 83.45 | |
110310XX99XXXX | 腎臓又は尿路の感染症 手術なし | 47 | 13.49 | 13.61 | 29.79 | 79.06 | |
160100XX97X00X | 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 処置2なし 定義副傷病なし | 31 | 6.9 | 10.14 | 12.9 | 70.32 |
当院救命救急センターは、病院運営方針にも掲げられた「救命救急医療を通じ、断らない医療を推進する」を基本原則に、年間約10,000件の救急搬送患者を受け入れています。当科の常勤医は13名です(救急科専門医3名、脳神経外科専門医1名、外科専門医1名、循環器専門医2名、総合内科専門医2名)。24時間365日救急専従医が初療を担うシフトを組んでいます。少しずつですが、女性医師も増えて、3名所属しています。各診療科と連携を取り、24時間365日、さまざまな救急疾患に対応できる診療体制を整えています。
救急科では初期対応を行い、必要に応じ各専門診療科に引き継ぎをしますが、重症度の高い多臓器にまたがる患者さんや、特に多発外傷や中毒などの重症患者については救急科が主治医となり入院治療を行います。当科が診療を担当する最も多いのは中毒患者で、精神科などと連携を取り対応を行っています。数日で退院できる患者さんも多いですが、重症患者は集中治療室での管理を行います。その他、多様な疾患を抱え、かつ患者さんを他科へ転科することの多い当科ではDPC上の統計に表れにくいですが、頭部外傷や誤嚥性肺炎、前庭機能障害といった患者さん、並存疾患を持つ高齢者の診療も多く受け持っています。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
ファイルをダウンロード初発 | 再発 | 病期分類 基準(※) |
版数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Stage I | Stage II | Stage III | Stage IV | 不明 | ||||
胃癌 | 69 | 8 | 10 | 40 | 7 | 15 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
大腸癌 | 20 | 49 | 53 | 71 | 28 | 41 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
乳癌 | 41 | 52 | 10 | 12 | - | 10 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
肺癌 | 31 | 19 | 23 | 91 | 24 | 31 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
肝癌 | 2 | 8 | 14 | 10 | 8 | 6 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
2022年7月からがんセンターを開設しています。がんセンターはがん関連各診療科、手術部門(ロボット手術センター)、化学療法部門(化学療法プロトコル委員会、外来化学療法室)、放射線治療部門、がんゲノム医療部門、診療・患者支援部門(緩和ケアチーム、高齢者がん周術期サポート部門、聖母ホスピス病棟、キャンサーボード)、研修・教育部門、がん相談支援センター、がん登録室からなる組織横断的なセンターとして構成しています。当院を受診されるがん患者さんの特徴として、Ⅲ、Ⅳ期の患者さんが多い傾向にあります。進行したがんの治療は難しくなりますが、すべてのがん患者さんの利益に資することを理念として掲げ、地域と連携し、診断→治療→ケア→人生最終段階のケアまでの一貫した診療を切れ目なく円滑に進めることを目標としています。また、2021年からはがんゲノム医療連携病院の指定を受け、進行した症例に対して積極的にがんゲノムパネル検査を推奨し、治療の可能性を追及しています。
成人市中肺炎の重症度別患者数等
ファイルをダウンロード患者数 | 平均 在院日数 |
平均年齢 | |
---|---|---|---|
軽症 | 2 | 10.00 | 66.50 |
中等症 | 22 | 17.00 | 74.27 |
重症 | 6 | 24.83 | 81.00 |
超重症 | 2 | 11.50 | 84.00 |
不明 | - | - | - |
市中肺炎とは、一般社会生活を送っているに人に見られる肺炎のことをいいます。免疫低下した状態の方や病院内で発生した肺炎(医療介護関連肺炎)、明らかな誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)などは除かれます。市中肺炎は、成人市中肺炎診療ガイドラインに示された症状・身体所見・年齢による重症度分類(A-DROP(上記))により重症かどうかが判断され、治療の場所や内容が決定されます。
軽症(重症度スコア0)の患者さんは外来で治療することもありますが、中等症(重症度スコア1~2)、重症(重症度スコア3)の患者さんは主に入院で治療を行います。治療は抗菌薬と中心とした薬物療法が主体となりますが、患者さんの呼吸不全の程度に応じて酸素療法、人工呼吸管理といった呼吸管理を行っていきます。最近では人工呼吸器管理まで行わず高流量鼻カニューレ療法で治療されている方が増えています。当院では中等症以上の患者さんが入院治療の中心となっています。軽症に比べて、中等症や重症では高齢の患者さんが多くなる傾向にあり、また重症度が上がるほど呼吸不全や他の臓器の合併症が増加するため、長い治療期間が必要となっています。
脳梗塞の患者数等
ファイルをダウンロード発症日から | 患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 | 転院率 |
---|---|---|---|---|
3日以内 | 499 | 22.32 | 74.6 | 49.5 |
その他 | 137 | 17.89 | 65.2 | 26.28 |
脳梗塞の入院患者総数は636名です。このうち、発症3日以内の急性期入院が78%と多くを占め、救急中心の診療体制を取っています。
平均年齢は72.6歳で、高齢化は進んでいます。 平均在院日数は21.4日、転院率は44%で、早期からの治療・リハビリテーションを行うことにより、約半数の患者さんが自宅や施設に帰られています。
回復期リハビリ病棟を中心とする転院先との連携も深め、地域に根ざした切れ目のない医療・介護体制の構築にも努めています。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
ファイルをダウンロード消化器内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K7211 | 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2cm未満 | 263 | 1.08 | 1.88 | 0.38 | 67.53 | |
K688 | 内視鏡的胆道ステント留置術 | 75 | 1.61 | 10.37 | 6.67 | 78.33 | |
K654 | 内視鏡的胆道ステント留置術 | 59 | 1.61 | 12.03 | 22.03 | 76.32 | |
K6871 | 内視鏡的消化管止血術 | 50 | 1.98 | 12.34 | 12 | 76.08 | |
K6532 | 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術 | 42 | 1.12 | 7.12 | 0 | 74.48 |
2022年度のコロナ禍において、当院消化器内科では年間約6,000件の内視鏡検査(カメラ)および治療を行っており、当科における診療の主体を成しています。内視鏡を用いたさまざまな検査や治療のほとんどを行うことが可能で、中でも胃・大腸をはじめとした消化管腫瘍性病変の内視鏡を用いた治療は、年間約500件行われています。
大腸ポリープと呼ばれる大腸の腫瘍性病変に対する治療は年間約400件行われています。通常は3~4日程度の入院の上で、スネアという器具を用いて内視鏡的大腸ポリープ切除術を行うことが多く、病変が比較的小さな場合には外来での日帰り治療も行っています。また2cm以上の大きながんに対しては粘膜下層剥離術という手法を用いて内視鏡を用いた切除術を行うことが可能です(年間約35件)。これらの治療で根治が期待できる病変は腺腫という良性の腫瘍、および粘膜から粘膜下層表層(腸壁の浅い部分まで)にとどまるがんであり、それ以上深く浸潤したがんに対しては根治が期待できないため、外科的な腸管切除術による治療が行われます。
近年、脳梗塞や心筋梗塞などのご病気を患われている、またはその予防目的に抗血栓薬という血液をサラサラにする薬を服用している方が多く、このような患者さんにおいては抗血栓薬を休薬しないと内視鏡を用いた病変の切除術を行う事ができない場合があります。抗血栓薬を内服したまま治療を行うと出血の危険性が高くなりますが、休薬する事で今まで落ち着いていた脳梗塞や心筋梗塞が再発する危険性もあります。当院では1cm程度までの小さな良性腫瘍(腺腫)に対しては抗血栓薬を内服したままで治療を行うことが可能であり、良好な治療成績が得られています。ただし抗血栓薬の種類や複数の抗血栓薬を内服されている場合は治療を行うことができない場合もありますので、専門医に相談していただくことが望まれます。
胃や食道の浅いがんに対しても大腸の大きな病変と同様に、上述した粘膜下層剥離術という手法を用いて内視鏡を用いた切除術を行っています。ただしがんの種類や大きさなどによりその適応が異なるため、専門医との相談が必要です。
当院では救急搬送される患者さんが多いことも特徴の一つです。その中でも胃・十二指腸潰瘍や大腸憩室(大腸壁がふくろ状に拡がった部分)からの出血など、さまざまな消化管出血により救急搬入される方が多くいらっしゃいます。このような患者さんには内視鏡を用いた止血術を行い、良好な治療成績が得られています。また小腸から出血を来すような場合もあり、その場合にはカプセル型の内視鏡を用いた診断や小腸用の内視鏡を用いた止血術を、内視鏡で止血が困難が場合には当院放射線科の医師と連携した血管造影下での止血術を行っています。
胆管の結石やがん、膵臓がんなどによる胆管狭窄を原因とした胆管炎や閉塞性黄疸などの疾患に対する内視鏡を用いた治療は、年間約300件行われています。中でも胆石性胆のう炎、胆管結石に伴う胆管炎などの患者さんが数多く緊急搬送されます。胆管結石に伴う胆管炎の患者さんに内視鏡を用いて十二指腸の乳頭部という胆汁の出口を切開し、それに引き続き採石や胆管ドレナージ術(プラスチック製のチューブを胆管に挿入することで胆汁の流れを良くする方法)を行っています。胃の手術を受けた方で、手術後に胃や腸の吻合再建方法が複雑な方が胆管結石を伴う胆管炎を発症した場合、通常の内視鏡を用いた方法では採石や胆管のドレナージ術を行う事が困難な場合もありますが、当科では専用の内視鏡を用いて採石や胆管ドレナージ術を行うことが可能です。また胆のうや胆管、肝臓、膵臓などのがんを原因として胆汁の流れが悪くなることで生じる黄疸(閉塞性黄疸)の患者さんに対しても、プラスチック製のチューブや金属ステントという網目状の筒型金属を用いた胆管ドレナージ術を行っています。
以上、当院の主な治療について簡単に説明いたしました。このようなご病気に関してご心配な場合や質問があれば、当科を受診の上でご相談ください。かかりつけ医がいらっしゃる場合にはかかりつけ医と相談し、紹介状を持参の上で来院していただきますと円滑に受診していただくことができます。
脳血管内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K178-4 | 経皮的脳血栓回収術 | 26 | 0.31 | 27.58 | 80.77 | 68.77 | |
K609-2 | 経皮的頸動脈ステント留置術 | 12 | 10.08 | 14.75 | 16.67 | 75.67 | |
K654 | 内視鏡的消化管止血術 | - | - | - | - | - | |
K386 | 気管切開術 | - | - | - | - | - | |
K616 | 四肢の血管拡張術・血栓除去術 | - | - | - | - | - |
頭頚部の主幹動脈(太い動脈)が急速に閉塞して脳梗塞を生じた場合、緊急再灌流療法(カテーテル治療)による治療を検討します。血栓(血液の塊)が血管を閉塞した場合に対する「脳血栓回収術」、徐々に進行した動脈硬化が急に血管を閉塞した場合に対する「経皮的脳血管形成術」は、単独あるいは併用して行われます。カテーテル治療件数は年々増加し、良好な成績を収めていますが、脳梗塞超急性期の治療は時間との勝負であることは否めません。症状出現から治療までの時間が短ければ短いほど、より高い効果が得られ、後遺症を治癒・軽減することができます。脳梗塞では、片側の手足の脱力、言語障害や呂律不良、顔面麻痺、重症例では意識障害で反応が鈍くなる、共同偏視といって眼が左右一定方向に固定するなどの症状が突然出現しますので、ご自身やご家族の方にこれらの症状が現れた場合は、直ちに救急車を要請し、一刻も早く治療を受けてください。私たちは一人でも多くの患者さんを治すために、いつでも迅速な治療ができる体制を整えています。
一方、無症状もしくは軽症な脳梗塞患者さんでも、頸動脈に高度な狭窄を有している方がいます。そのような方々に対しては「経皮的頸動脈ステント留置術」などの予防的・慢性期治療も積極的に行っています。治療を希望される方は、かかりつけの先生と当科の受診についてご相談ください。
循環器内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K5951 | 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの | 137 | 1.21 | 2.23 | 0 | 69.73 | |
K5493 | 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの | 94 | 3.3 | 3.63 | 2.13 | 69.71 | |
K5492 | 経皮的冠動脈ステント留置術 不安定狭心症に対するもの | 50 | 0.1 | 13.66 | 10 | 69.72 | |
K5972 | ペースメーカー移植術 経静脈電極の場合 | 38 | 2.92 | 10.42 | 13.16 | 80.39 | |
K5952 | 経皮的カテーテル心筋焼灼術 その他のもの | 30 | 1.57 | 3.43 | 0 | 56.07 |
循環器内科における手術としては、カテーテルによる経皮的冠動脈形成術(経皮的冠動脈ステント留置術)と経皮的心筋焼灼術が主になります。
急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群に対する冠動脈形成術は、緊急または準緊急で速やかに実施できる体制を整えています。
合併症の少ない橈骨または遠位橈骨動脈穿刺を原則とし、在院日数の短縮、転院率の抑制を図っています。慢性虚血性心疾患に対する待機的な冠動脈形成術は原則として入院翌日に実施し、従来からの負荷心電図や負荷心筋アイソトープ検査に加え、冠動脈造影に引き続き圧センサー付きワイヤーで冠血流予備量比(FFR)を測定することで、機能的な虚血が証明された例において、手技的なリスクも考慮した上で適応を決定します。近年では心臓CT画像を元に、狭窄が血流に与える影響を流体力学解析を行い評価するFFR-CTも併用することで、治療適応をより厳密に評価しています。
カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)は、上室性頻拍、WPW症候群、心房粗動、心房細動などの頻拍性不整脈に対する治療です。非常に有効で低侵襲な治療ではありますが、緊急で必要となることは稀な治療でありますので、適応判断は慎重に行っています。2019年にクライオアブレーション(冷凍焼灼術)を、その後レーザーバルーンも導入し、より効率的な治療を図っています。
徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療は代替療法に乏しいため、患者年齢の平均は80歳と年々高齢化が見られます。転院率が13%と比較的高くなっていますが、2021年度の21%よりも低率となっており、地域での訪問診療、介護サービスの拡充が反映されていることが推察されます。
小児科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K7151 | 腸重積症整復術 非観血的なもの | 17 | 0.12 | 1 | 0 | 1.65 | |
K653-3 | 内視鏡的食道及び胃内異物摘出術 | - | - | - | - | - | |
K0011 | 皮膚切開術 長径10cm未満 | - | - | - | - | - | |
K386 | 気管切開術 | - | - | - | - | - | |
K7211 | 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2cm未満 | - | - | - | - | - |
腸重積症を疑う症状として、頻回嘔吐や間歇的に泣き止まないなど、血便が出現する前に当院小児救急外来にて腹部エコーを実施しています。症状出現から12時間以内に診断されることが多く、非観血的な整復治療が可能となっています。ただし整復困難例は小児外科にコンサルトを行い、再度整復実施または手術による整復術を行っています。
病歴や診察所見から消化管異物や出血・ポリープを疑えば、単純X線撮影・CT検査を行い異物の病態や出血部位の確認を行います。総合的な判断を行い、消化器内科にコンサルトを行い全身麻酔下で内視鏡的に食道及び胃内異物除去術や止血術・粘膜切除術を行っています。
皮膚感染症:皮下膿瘍に関しては、小児科にて抗菌薬静注投与を行います。ただし症状の改善に乏しい場合は皮膚切除を部位や範囲を考慮して、皮膚科・形成外科・小児外科にて処置を行います。また熱傷や外傷性皮膚欠損の患児には、形成外科にて非露出部から皮膚を採取し、広範囲な部位に対して分層植皮術を行っています。
小児神経疾患などで抜管困難及び誤嚥性肺炎を繰り返し呼吸状態が安定しない場合は、耳鼻いんこう科にコンサルトを行い気管切開術を行っています。また食事摂取が出来ず経管栄養では管理が困難な場合は、小児外科にコンサルトを行い、胃への直接の栄養注入を可能にするため胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む)を行っています。
小児循環器内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K574-2 | 経皮的心房中隔欠損閉鎖術 | 25 | 2 | 3.32 | 0 | 15.36 | |
K5621 | 動脈管開存症手術 経皮的動脈管開存閉鎖術 | 10 | 1.9 | 2.1 | 0 | 3.7 | |
K6153 | 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) その他のもの | - | - | - | - | - | |
K5551 | 弁置換術 1弁のもの | - | - | - | - | - | |
K5741 | 心房中隔欠損閉鎖術 単独のもの | - | - | - | - | - |
当科は先天性心疾患の患者さんにカテーテルという細い管を使って胸に傷をつけずに治療を行うカテーテル治療を日本で始まってから間もない1980年代より行っています。上記表で経皮的とはカテーテルを用いた治療法の意味です。ただすべての心臓病の治療ができるものではなく、開胸開心術が必ず必要な複雑な心臓病もあり、カテーテル治療と開胸開心術は先天性心疾患を治療する上での車の両輪の役割だと考えています。
設立当初のカテーテル治療は動脈管開存症に対してporstman法や初期のバルーンを用いた肺動脈弁拡大術などを行っていましたが、診断機器や技術、治療道具やデバイスの進歩とともに多くの疾患に適応できるようになりました。
2006年からはAmplatzer Septal Occluder(ASO)やOcclutech Figulla FlexⅡ閉鎖栓を使用した心房中隔欠損症のカテーテル治療を開始し、小児期から80代の高齢者まで幅広く治療しています。また、2009年よりAmplatzer Duct Occluder(ADO)を用いた動脈管開存カテーテル治療の認可施設としての治療も行っています。ASOを使用した心房中隔欠損症の治療は571例(2023年8月31日現在)、ADOを用いた動脈管開存カテーテル治療は102例(2023年8月31日現在)で、九州内各県よりご紹介いただいています。
2015年よりカテーテル治療は主にハイブリッド手術室で行っており、清潔で安全なカテーテル治療が可能になっています。そのほか新生児動脈管ステント留置術や動脈管コイル塞栓術、大動脈や肺動脈のバルーン弁拡大術、Vasucular plug閉鎖栓を使用した側副血行路塞栓など積極的に行っています。2020年から新生児用の動脈管閉鎖栓であるAmplatzer Piccolo Occluderが、また2022年より、新しい心房中隔閉鎖栓であるGORE deviceが使用可能になり、今まで治療が困難であった方々により安全により低侵襲で治療が可能になっています。
カテーテル治療ができない方たちは、開胸での心臓手術が必要となりますが、手術前の管理は新生児科・小児科・循環器内科と協力して行い、年齢・体重・疾患の重症度などを考慮し、当院の心臓血管外科または久留米大学病院、福岡市立こども病院、九州大学病院などでの外科治療をお願いしています。外来通院からカテーテル検査・治療、術前・術後管理、外来フォローまで責任をもって治療を行い、できるだけお待たせしないような診断・治療・手術計画を立てるように配慮しています。
外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K672-2 | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 | 108 | 3.23 | 6.41 | 6.48 | 64.11 | |
K719-3 | 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 | 41 | 4.17 | 12.24 | 0 | 70.54 | |
K718-21 | 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの | 37 | 0.86 | 5.22 | 0 | 37.27 | |
K6113 | 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 | 36 | 2.56 | 5.56 | 0 | 65.33 | |
K6335 | ヘルニア手術 鼠径ヘルニア | 35 | 1.94 | 5.23 | 8.57 | 71.6 |
2022年度から上部消化管、下部消化管、肝胆膵・移植の診療科を設置して、より質の高い医療を提供できるようにチーム医療を行っています。
2022年の手術件数は923件 (全身麻酔+局所麻酔)、定例手術 605件、緊急手術 318件を施行しています。また地域がん診療連携拠点病院として、2022年のがん手術は334件で、内訳は胃がん48件、結腸・直腸がん108件、肝・胆・膵がん54件、乳がん124件です。上部・下部消化管疾患はともに腹腔鏡下手術がメインで、全体の80%以上を占めています。2018年からは、患者の負担がより少ないロボット支援下手術を胃がん手術に導入し、2023年3月までに胃がんに対して163件施行し、2019年からは、直腸がんに対して導入し、2023年3月までに直腸がんに対して44件、結腸がんに対して7件のロボット支援下手術を施行しています。肝胆膵外科領域では、腹腔鏡下手術から肝移植の技術を応用した高難度手術まで実施しており、現在は肝胆膵外科高度技能修練施設Bを取得し、2022年は肝胆膵高度技能手術 30件を実施しています。一般外科として、胆石症、ヘルニア、虫垂炎の手術を実施しており、2022年は胆嚢摘出術 109件(腹腔鏡手術 97%)、虫垂切除術50件(腹腔鏡手術 88%)、ヘルニア根治術 45例(前方アプローチ 87%、腹腔鏡手術 13%)を実施しています。
乳腺外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K4762 | 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) | 34 | 1.03 | 5.56 | 2.94 | 62.94 | |
K4765 | 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩鎖骨下部郭清を伴うもの)・胸筋切除を併施しないもの | 25 | 1.04 | 11.44 | 4 | 58.92 | |
K4763 | 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) | 24 | 1.38 | 9.08 | 12.5 | 61.71 | |
K6113 | 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 | 21 | 2.62 | 2.43 | 0 | 58.86 | |
K0171 | 遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの) 乳房再建術の場合 | 15 | 1.13 | 13.13 | 0 | 44.07 |
当院は、地域がん診療連携拠点病院として乳がん治療に対し専門的なスタッフをそろえ、診断、手術(乳房再建含む)、薬物治療、放射線治療、リンパ浮腫治療など乳がん治療に必要なすべての治療を行うことができます。化学療法に関しては、患者さんが安心して化学療法を受けられるように静脈ポート(持続注入用植込型カテーテル)留置を推奨し行っています。乳房全切除や乳房部分切除も患者さんの希望と病変の広がりに応じて適応を判断します。近年は乳房再建手術も増加傾向で、形成外科専門医と連携して安全に行っています。標準治療としてのセンチネルリンパ節生検は、色素法に加え赤外線法を用いたリンパ節検出法とOSNA法を用いた転移の診断法を取り入れています。乳腺の良性腫瘍の手術も行っています。
移植外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K780-2 | 生体腎移植術 | - | - | - | - | - | |
K0011 | 皮膚切開術 長径10cm未満 | - | - | - | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - | |
- | - | - | - | - | - | - |
聖マリア病院 移植外科は「筑後地区に移植医療を根ざす」ことを目的に2015年9月より外来診療を開始しました。近隣の各透析施設からご紹介いただき、2023年6月現在、58例の生体腎移植を行いました。これまで当院で生体腎移植を受けた患者さんの半数以上は透析導入前或いは移植直前導入の移植でした。また血液型不適合移植が全体の約3割を占め、その結果ドナーとレシピエントの関係において約4割は夫婦間でした。これは全国の傾向と同じものです。
そして2018年11月からは献腎移植登録も開始し、現在までに60人の登録を行っています。これらの方々は初回登録後、平均15年間の待機年数が必要となります。2010年の臓器移植法改正により、家族の承諾のみで臓器提供が可能となりましたが、人口100万人当たり、ドナー数は0.61人と、いまだ世界の中では少ない状況です。現在日本での献腎登録者数は1万3500人。年間約2000例の腎移植数のうち、献腎移植は200例程度にすぎません。臓器提供したい・したくないに関わらず意思表示(免許証・保険証・マイナンバーカード)をしておくことが献腎移植を普及する一歩となると考えています。
小児外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K836 | 停留精巣固定術 | 93 | 0.39 | 1 | 0 | 2.08 | |
K6335 | ヘルニア手術 鼠径ヘルニア | 74 | 0.42 | 1 | 0 | 3.35 | |
K718-21 | 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの | 54 | 0.81 | 5.59 | 0 | 10.09 | |
K634 | 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) | 54 | 0.7 | 1.11 | 0 | 4.69 | |
K6333 | ヘルニア手術 臍ヘルニア | 21 | 0.38 | 1 | 0 | 2.1 |
鼠径ヘルニアと停留精巣は、小児外科の定例手術の約半数を占める疾患です。例年通り200例以上の手術が行われており、在院日数も短期間です。
救急疾患である虫垂炎は、患者さんやご家族の希望も考慮して、手術療法と保存的治療のいずれかを選択します。手術療法での在院期間は虫垂周囲膿瘍を伴う症例で数日ですが長くなることがあります。また、保存的治療では必然的に虫垂周囲膿瘍がある患者さんの在院期間は長くなりますので、全体的な結果として在院日数の差が認められます。
その他、先天性食道閉鎖症、直腸肛門奇形、ヒルシュスプルング病、先天性胆道拡張症、胆道閉鎖症などに代表される小児外科独特の疾患の治療も広範に行っています。積極的に鏡視下手術を導入することで可能な限りの侵襲低減に努めています。
形成外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K333 | 鼻骨骨折整復固定術 | 27 | 1.67 | 4.48 | 0 | 20.63 | |
K0051 | 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部) 長径2cm未満 | 17 | 1 | 2.59 | 0 | 10.82 | |
K227 | 眼窩骨折観血的手術(眼窩ブローアウト骨折手術を含む。) | 16 | 1.63 | 4.94 | 0 | 47.94 | |
K4073イ | 顎・口蓋裂形成手術 顎裂を伴うもの 片側 | 14 | 1.36 | 10.79 | 0 | 6.93 | |
K084 | 四肢切断術(上腕、前腕、手、大腿、下腿、足) | 14 | 12 | 38.36 | 78.57 | 71.71 |
当院は救急病院であり顔面骨骨折の手術が多くなっています。そのため鼻骨骨折徒手整復術、眼窩底骨折手術が上位を占めており、外傷による皮膚広範囲欠損に対しては動脈皮弁術や植皮術で創部の被覆や再建術を行っています。そのほか入院が必要な小児や高齢者の皮膚腫瘍の手術を行っています。近年糖尿病や閉塞性動脈疾患、慢性透析に起因する難治性足潰瘍が増えており、感染から大切断を含めた手術を要する患者さんも増えています。また口唇口蓋裂センターを立ち上げており、口唇口蓋裂疾患に関しては院内でチーム医療を実践しています。
整形外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K0461 | 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿 | 224 | 3.46 | 18.96 | 72.77 | 75.66 | |
K0811 | 人工骨頭挿入術 肩、股 | 137 | 5.31 | 19.56 | 86.86 | 80.34 | |
K0462 | 骨折観血的手術 前腕、下腿、手舟状骨 | 128 | 3.4 | 15.12 | 25.78 | 51.72 | |
K1422 | 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 後方又は後側方固定 | 58 | 8.91 | 29.38 | 81.03 | 70.19 | |
K0463 | 骨折観血的手術 鎖骨、膝蓋骨、手(舟状骨を除く。)、足、指(手、足)その他 | 56 | 4.23 | 19.27 | 50 | 54.46 |
大腿骨近位部骨折は高齢者に多く、転倒などの軽微な外傷で起こります。治療方法としては、骨接合術や人工骨頭置換術などの手術を行う必要があります。麻酔科と協力して手術までの待機日数の短縮に努めてきたことで、2022年度の平均待機日数は3日まで短縮しました。7割以上の患者さんが、入院後3日以内に手術を行っています。
患者さんが手術を受けた後、歩行能力を再獲得するためには術後のリハビリも大変重要です。当院は、術後の早期リハビリ開始にも力を入れており、近隣の回復期リハビリ病院などとも連携して、継続的なリハビリの提供に努めています。
脊椎の手術が増加傾向です。脊椎外傷、変性疾患、転移性脊椎腫瘍、化膿性脊椎炎など多彩な疾患を扱っています。最近は骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKP(経皮的椎体形成術)が増加しており早期離床が可能になりました。2022年度の脊椎関連手術は162件、そのうちBKPは42件でした。
当院は救急病院であり、上肢、下肢、脊椎、骨盤などさまざまな部位を骨折された患者さんが来院されます。緊急を要する開放骨折や難易度の高い複雑な骨折も多数治療を行っています。
常に安全かつ精度の高い手術の提供に心がけるとともに、良好な機能回復に努めています。
呼吸器外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K5131 | 胸腔鏡下肺切除術 肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの) | 50 | 2.8 | 5.28 | 2 | 29.72 | |
K514-23 | 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの | 27 | 1.19 | 13.56 | 3.7 | 68.93 | |
K514-21 | 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 部分切除 | 18 | 1.28 | 9.06 | 5.56 | 66.83 | |
K488-4 | - | - | - | - | - | - | |
K513-2 | - | - | - | - | - | - |
自然気胸に関しては、紹介時点で、もっとも早く社会復帰できる手段を考えております。麻酔科の理解と協力を得て、可能な限り早めの手術枠確保を目指しております。肺がんに関しては近年の知見に照らして術式を決定しています。しかし依然として肺葉切除を要する症例が多いように思います。転移性肺腫瘍などの紹介もあるため、部分切除の症例も少なくありませんが、いずれの症例においても、ほぼ定型化した管理ができていると思います。
脳神経外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K164-2 | 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 | 119 | 0.83 | 16.94 | 30.25 | 80.21 | |
K1781 | 脳血管内手術 1箇所 | 30 | 1.77 | 27.67 | 46.67 | 65.5 | |
K1692 | 頭蓋内腫瘍摘出術 その他のもの | 29 | 11.62 | 35.93 | 27.59 | 58 | |
K0004 | 創傷処理 筋肉、臓器に達しないもの(長径5cm未満) | 23 | 0 | 18.26 | 47.83 | 73.26 | |
K1771 | 脳動脈瘤頸部クリッピング 1箇所 | 22 | 2.95 | 30.18 | 45.45 | 63.95 |
2008年から本格的に開始した脳血管内手術は順調に件数を重ねており、近年は毎年100件を超えています。2019年には138件と過去最多を記録し、2020年度はコロナの影響もあり若干減少したものの、2021年度は再び増加傾向にありました。当院の特徴として小児の脳卒中も多く、破裂の脳動静脈奇形(AVM)やモヤモヤ病といった脳血管奇形や先天疾患も多く見られます。当院での血管内手術はほぼ全てハイブリッド手術室で行っていますが、特にこうしたAVMなどの困難な症例においては、当院の特徴である“バイプレーン”でのハイブリッド治療が可能であり、カテーテル手術と開頭手術を同時に、それぞれの質を落とすことなく施行しています。
当脳神経センターでは小児神経外科認定医、神経内視鏡技術認定医、内分泌専門医など専門医の取得が進んでいます(下記参照)。内視鏡設備なども配備され、特に小児領域・脳腫瘍においても力を入れています。
〇日本脳神経外科学会 専門医:8人(うち指導医5人)
〇日本脳神経血管内治療学会 専門医:4人 指導医:1人
〇日本脳卒中学会 専門医:4人
〇日本神経内視鏡学会 技術認定医:3人
〇日本小児神経外科学会 認定医:1人
〇日本内分泌学会 内分泌代謝科(脳神経外科)専門医:1人
手術器具に関しては、2020年新たに最新の手術顕微鏡(Leica:ARveo)を導入し、また近年新たに神経内視鏡システムを導入しております。神経内視鏡技術認定医・内分泌専門医も常勤となり、下垂体疾患にも対応しています。バイプレーンの血管造影装置を備えたハイブリッド手術室、ナビゲーションシステム・術中のモニタリングシステム(SEP・MEP・VEPなど同時8ch計測可能)・新しい止血機能も備えたCUSAも順調に稼働しており、充実した設備のもとに、より安全な手術を行うべく努力しています。
心臓血管外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K5606 | 大動脈瘤切除術(吻合・移植)腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの) | 14 | 2.71 | 13.64 | 14.29 | 73 | |
K5612ロ | ステントグラフト内挿術 1以外の場合 腹部大動脈 | 12 | 2 | 8.33 | 0 | 78.83 | |
K5522 | 冠動脈、大動脈バイパス移植術 2吻合以上のもの | - | - | - | - | - | |
K6093 | 動脈血栓内膜摘出術 その他のもの | - | - | - | - | - | |
K617-6 | 下肢静脈瘤血管内塞栓術 | - | - | - | - | - |
当院心臓血管外科は、成人心疾患および血管疾患に対する手術を行っています。最近では動脈硬化を原因とする、虚血性心臓病、大動脈弁狭窄症、大動脈瘤、閉塞性動脈閉塞症が増加しています。狭心症に対する冠動脈バイパス手術は、内科的治療の適応にならない石灰化病変、複合疾患や緊急対応を要する手術が多くなっています。また人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス手術は術後の回復が早く、積極的に行っています。弁膜症は変性疾患が増加し、可及的に自己弁を温存した僧帽弁形成術を行っています。新たな取り組みとしては2022年3月から右小開胸(MICS)僧帽弁手術を開始しています。当科では早期回復のためにリハビリの介入を可及的に術翌日から行っています。患者さんに安心して帰っていただけるように、退院後も外来心臓リハビリや必要であれば連携病院でのリハビリに協力いただいています。腹部大動脈瘤に対しては解剖学的適応があればステントグラフト留置術を、若年の患者さんや重要な分枝からの距離がない場合は開腹手術を行っています。末梢動脈の閉塞性疾患に対する血行再建療法としては、カテーテルでのステント内挿術、バイパス手術を行っています。胸部・腹部大動脈瘤のステントグラフト治療、末梢血管のカテーテル治療はハイブリッド手術室にて対応しています。また下肢静脈瘤手術として血管塞栓療法を開始しましたが、術後の疼痛が少なく、症例数は増加しています。
産婦人科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K8981 | 帝王切開術 緊急帝王切開 | 148 | 4.84 | 8.27 | 0 | 33.3 | |
K8982 | 帝王切開術 選択帝王切開 | 129 | 5.47 | 7.84 | 0 | 32.97 | |
K8882 | 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの | 64 | 0.92 | 4.19 | 0 | 43.75 | |
K867 | 子宮頸部(腟部)切除術 | 60 | 1 | 1.85 | 0 | 44.12 | |
K889 | 子宮附属器悪性腫瘍手術(両側) | 42 | 2.1 | 10.69 | 0 | 60.02 |
産科は総合周産期母子医療センターを担っているため、多くのハイリスク症例のご紹介をいただきます。
2022年は総分娩数が606件でその内47%の287件は帝王切開術によるものでした。選択的帝王切開術も双胎妊娠管理に伴うものや、上記コードに含まれない前置胎盤などの医院での対応困難症例などがありました。
新型コロナウイルス感染症以降は、例年よりも総分娩数、帝王切開数は減少しましたが、2021年度よりは増加傾向でした。筑後地域のみでなく、日本全体の出生数の減少の影響も考慮されます。
婦人科領域では、子宮・卵巣の良性腫瘍に対して患者さんの負担が少ない腹腔鏡手術を積極的に行い、平均術後日数の短縮に取り組んでいます。開腹手術は、良性疾患であっても重篤な合併症を有する症例や難渋すると思われる症例を集学的に取り組んでいます。地域がん診療連携拠点病院として、婦人科腫瘍専門委を中心に卵巣がんをはじめとした子宮付属器の悪性腫瘍手術や、子宮悪性腫瘍手術を積極的に行っています。がん検診による早期発見・早期治療は死亡率の低下のために重要なことです。がん検診により紹介された子宮頸部高度異形成、上皮内腫瘍などの前がん病変・初期病変に対しての早期治療として円錐切除術を行っています。
眼科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K2821ロ | 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 その他のもの | 275 | 1.06 | 1.04 | 0.73 | 76.13 | |
K2801 | 硝子体茎顕微鏡下離断術 網膜付着組織を含むもの | 233 | 1.02 | 6.22 | 0 | 64.57 | |
K2802 | 硝子体茎顕微鏡下離断術 その他のもの | 36 | 0.89 | 3.03 | 2.78 | 64.28 | |
K2821イ | 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 縫着レンズを挿入するもの | 28 | 0.93 | 1.18 | 0 | 78.64 | |
K2686 | 緑内障手術 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術 | 24 | 1 | 1.08 | 0 | 76.17 |
日帰り手術を含めると年間1,200例以上の手術を行っていますが、水晶体再建術(白内障の手術)が最多です。散瞳不良例やチン小帯脆弱例などの難症例はもちろん、心臓病や腎機能障害、精神科疾患など全身状態に不安のある患者さんの手術が可能です。
また網膜剥離、黄斑前膜、黄斑円孔、糖尿病網膜症などの網膜疾患に対する硝子体手術に特に力を入れていますが、最近では緑内障手術にも力を入れています。流出路再建術、濾過手術だけでなく、チューブシャント手術にも対応可能です。2019年6月からは水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術(iStent手術)も開始しています。2020年12月からiStent inject Wを導入しました。2個打ちのためさらなる眼圧下降効果が期待されます。
最新の手術用顕微鏡、広角眼底観察システム、硝子体手術装置を2台ずつ導入し、安全かつ低侵襲の手術を目指しています。
耳鼻いんこう科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K3772 | 口蓋扁桃手術 摘出 | 114 | 1 | 6.1 | 0 | 19.79 | |
K340-5 | 内視鏡下鼻・副鼻腔手術III型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) | 30 | 1 | 6.17 | 0 | 57.13 | |
K4571 | 内視鏡下鼻・副鼻腔手術III型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) | 28 | 1 | 4.71 | 0 | 55.5 | |
K319-21 | 経外耳道的内視鏡下鼓室形成術 上鼓室開放を伴わないもの | 22 | 1 | 2 | 0 | 22.55 | |
K4611 | 甲状腺部分切除術、甲状腺腫摘出術 片葉のみの場合 | 17 | 1 | 5.71 | 0 | 59.35 |
小児から成人まで、いびきの原因である扁桃肥大や慢性扁桃炎の方に対して口蓋扁桃摘出術を施行します。また慢性副鼻腔炎に対して内視鏡下副鼻腔開放術を行います。併存する鼻中隔弯曲症に対して、同時に鼻中隔矯正術を追加します。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対して鼓室形成術を行いますが、内視鏡下手術が可能な症例に関しては入院が4日間と負担軽減に繋がっています。悪性リンパ腫確定診断のため、頸部リンパ節生検術を行います。耳ろう孔の感染がある場合は瘻管摘出を行い、消炎を図ります。
泌尿器科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K8036イ | 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用のもの | 100 | 1.65 | 5.39 | 3 | 75.61 | |
K7811 | 経尿道的尿路結石除去術 レーザーによるもの | 51 | 1.02 | 6.2 | 7.84 | 70.88 | |
K783-2 | 経尿道的尿管ステント留置術 | 44 | 1.73 | 13.66 | 20.45 | 77.61 | |
K764 | 経皮的尿路結石除去術(経皮的腎瘻造設術を含む。) | 12 | 1.75 | 12.5 | 0 | 65.42 | |
K775 | 経皮的腎(腎盂)瘻造設術 | 11 | 7.36 | 28.82 | 18.18 | 78.73 |
手術で最も多いのは、例年通り、膀胱がんに対する経尿道的切除術です。患者さんにとって膀胱を温存できるかどうかは重要な問題であり、可能な限り経尿道的手術でコントロール出来るように努力しています。
次に多いのが、腎尿管結石に対する内視鏡手術です(上記2位TUL+上記4位PNL)。経尿道的結石除去術(TUL)は、主にホルミウムレーザーにて砕石しています。ここ数年、当院ではTULや経皮的尿路結石除去術(PNL)といった尿路結石に対する手術が増加してきています。また、体外衝撃波砕石術(ESWL)も行っており、症例により適切な治療法を検討し選択しています。
次が経尿道的尿管ステント留置術です。当院は救急病院であり尿管結石による閉塞性腎盂腎炎、更に進行し敗血症となる症例も多く、できるだけ早期に閉塞を解除するように努めています。尿管ステント留置が困難な時には、経皮的腎瘻造設術を行い閉塞解除しています。
また、上記にはありませんが、救急病院であり急性陰嚢症(精索捻転)に対する手術も比較的多く行っております。
今後も患者さんに侵襲の少ない手術を行っていきたいと考えています。
腎臓内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K6121イ | 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの | 27 | 6.19 | 13.48 | 0 | 66.15 | |
K616-41 | 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 | - | - | - | - | - | |
K635-3 | 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 | - | - | - | - | - | |
K654 | 内視鏡的消化管止血術 | - | - | - | - | - | |
K783-2 | 経尿道的尿管ステント留置術 | - | - | - | - | - |
主な手術は透析用のアクセス関連ですが、ほとんどが透析導入前または透析導入期の手術です。維持透析患者の合併症や併発症のための手術は担当科で受け持ちます。また、アクセストラブルは透析内科で管理します。腹膜透析関連としてカテーテル挿入術を自科で行っております。
透析内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K6121イ | 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの | 35 | 13 | 27.91 | 8.57 | 66.8 | |
K616-41 | 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 | 22 | 3.64 | 9.36 | 13.64 | 61.05 | |
K616-42 | 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 1の実施後3月以内に実施する場合 | 12 | 4.58 | 6.33 | 0 | 66.75 | |
K6147 | 血管移植術、バイパス移植術 その他の動脈 | - | - | - | - | - | |
K635-3 | 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 | - | - | - | - | - |
透析患者のアクセス再建は院内外のアクセストラブルに対して、経皮的血管形成(PTA)、および手術によるアクセス再建術を行っています。PTAは外来で行うことを基本にしていますが、院外からの紹介や、シャント閉塞の場合入院していただくことも多くなっています。透析のアクセスの手術は透析に精通した医師が作成するのが好ましいと考えています。そのため私たちは自分たちでアクセスの作成をすることにしています。自己血管や人工血管でのシャントを作成しています。
腹膜透析のためのアクセス作成も透析科の医師により作成しています。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
ファイルをダウンロードDPC | 傷病名 | 入院契機 | 症例数 | 発生率 |
---|---|---|---|---|
130100 | 播種性血管内凝固症候群 | 同一 | - | - |
異なる | - | - | ||
180010 | 敗血症 | 同一 | 34 | 0.22% |
異なる | 1 | 0.01% | ||
180035 | その他の真菌感染症 | 同一 | 1 | 0.01% |
異なる | - | - | ||
180040 | 手術・処置等の合併症 | 同一 | 42 | 0.28% |
異なる | 2 | 0.01% |
総務省消防庁の「救急・救助の現況」によれば、わが国の救急搬送数はコロナ渦まで年々増加していました。2020年は新型コロナの影響で1割程度減少しましたが、2021年は再度増加し、2016年と同レベルまで回復しています。救急搬送数の増加は、高齢化に伴う高齢者の搬送数増加が主な原因と考えられています(救急・救助の現況2021年では救急搬送の60%以上が65歳以上)。筑後地方の基幹医療機関である当院においても、他院からの救急転院を含む高齢者の救急搬送数は年々増加傾向にあり、これらの患者さんは緊急および待機(準緊急を含む)手術が必要となる場合も少なくありません。2020年度以降の総手術件数および待機手術は過去最多であった2019年度よりはCOVID-19の影響により減少しましたが、20、21、22年度はほぼ7,700件前後で推移(コロナ前の2019年度とほぼ同数)しています。全手術数に占める緊急手術の割合は、2018~20年度までは16~18%でしたが、2021年度は15%(1,171件)と減少し、2022年度も14.6%とさらに減少しています。これは、全般的に多くの年齢階層で手術数が減少したためで、新型コロナによる外出自粛による外傷機会の減少などに関係しているのかもしれません。ただし、0~9歳階層での手術数の顕著な減少については小児心疾患の手術数減少が大きく影響しているものと考えられます。
当院の60歳以上の手術件数(待機+緊急)および割合は、ここ数年概ね前年度に比べ増加傾向にあり、2018年度以降は総手術件数の過半数を占めていますが、特に2021年度は初めて54%台となりました。特に70~79歳の年間手術件数(待機+緊急)はコロナ以前よりも増加し、1,700件以上となり、特に待機手術数は過去最多となりました。また2017年以降、80~89歳の年間手術件数(待機+緊急)も毎年1,000件を超え、90歳以上の年間手術件数(待機+緊急)も毎年200件以上となっていますが、2022年度はこれらの年齢階層でも70~79歳の階層同様過去最多となっています。
一方で手術・処置などの合併症発生率は2020年以降、0.3%未満となっています。高齢者の手術件数・緊急性などが増加傾向にあるのにもかかわらず、合併症の発生率を低レベルで維持できています。手術室、ICU、HCU系を含めた周術期・救急医療の急性期管理レベルの向上・維持が寄与しているものと考えられます。
DPC上の敗血症の発生率については過去5年(0.15~0.25%)とほぼ同レベルの範囲内で推移しており、またDPC上のDICや真菌感染症の発症数も例年通り5症例未満となっています。
更新履歴
2023年9月29日 令和4年度 聖マリア病院 病院指標を公開しました。